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最凶は誰だ
「うむ、美食の巫女殿、なかなかやるな。 このオーガーキラーを私と飲み交わすことができるとはすばらしい。」 オークの戦巫女が火酒が入った大ジョッキを水のように飲み干しながら言う。 角さえなければ、長身の人間の美女としか見えない。 「ふん、あたしはこう見えてもドワーフ一の大女で、ドワーフ5人力言われてるんだ。 このぐらいの酒はわけもないよ。」 こちらは、美食の女神の神官戦士にして料理人のチェルキー。 可愛らしい顔に不敵な笑顔を浮かべながらジョッキを煽る。 長身巨躯のグレドーラと比べると頭二つは低い。 もっとも、小柄な成人人間女性ほどの身長の割には、よく見るとやけに線が太くて力強い。 二人とも頑強な種族で、神官戦士という役割も同じ、だけど、チェルキーは小柄で可愛らしい容姿であることを、 見るからに屈強な戦士で美女であるグレドーラと比べてコンプレックに感じているらしい。 あらゆる種族の男性から見て十分に魅力的な二人だが、チェルキーの方が実は人気がある。 「オーガーキラーもいいけど、このドワーフスレイヤーもなかなかだよ。ぐっと行こうか」 オーガーを倒し、ドワーフをつぶす酒とはいったいどれほどの物か。 すでに飲み比べに参加している他の冒険者たちは全員床に突っ伏しているので聞き様がない。 と、そこに・・・・・・ 「喉かわいたクマ!!ジュースもらうクマ!!」 現れた熊耳の少女が、横からひょいっとチェルキーのジョッキを奪う。 「ちょっ、ちょっと、プーにゃん!!」 一気にドワーフスレイヤーを飲み干した熊耳の美少女は・・・・・・ ボン!! 次の瞬間巨大な熊の姿になっていた クマの巨体は、テーブルを押しつぶし、ジョッキや火酒の瓶が割れて、タルが砕け散る 「この勝負!!プーにゃんの乱入によりドロ~」 カンカンカンカンカンカンカンカン 誰かがその辺にあった鍋を叩く音の中 「ばっきゃろ~!!金返せ~!!」 「むにゃ~、からだが暖かいクマ~」 「クマが喋んじゃね~」 「え~い、この大トラ熊!!川でザリガニ食ってろ!!」 ケリケリ!! 「気持ちいクマ~、もっと肩叩いてクマ~」 「おきろ!!邪魔だ!!飲めねえだろが!!」 水ぶっかけられても・・・・・・ 「すや~」 冒険者たちの罵声が飛び交う中、巨大な熊の口から安らかなプーにゃんの寝息がこぼれた