桃杯争覇・雛壇の闘技
奈良時代の山深くに伝わる、桃の節句を祝う異種格闘技大会の壁画が発見された。この古墳時代の貴重な遺物は、男女混合の格闘技が行われた「桃杯争覇」と呼ばれる大会を描いている。雛壇に見立てた競技場では、参加者がひな人形に扮し、番付にも似たランキングで競い合っている。最上段では時の帝と妃が優雅に観戦し、勝者には上位リーグへの昇格が、敗者には降格が待ち受けていた。 「桃杯争覇」はやがて闘技の部分だけが衰退し、競技場のレイアウトだけが桃の節句を祝う「雛人形」として現代に伝わっている。 この壁画は、柔軟な身分制度と競争社会が共存していた古代日本の象徴である。成績に応じて社会的地位が変動するという、意外にも現代的な価値観を既に古代人が有していた証拠である。しかし、この重要な文化遺産は経年劣化でやや損傷しており、その古びた風貌がかえって時代の息吹を感じさせる。 民明書房刊「奈良山中の秘宝・桃杯争覇伝」より