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姉妹たちのウィンク
「ちょっと良いですか。戦士様」 見るからに物騒な、女性オーク、ただし結構な美人に、狐の獣人の少女が話しかける。 「貴様は……、スカウトか。正面から来るとは、なかなか潔いな」 スカウト(偵察兵)はもちろん盗賊の言いかえだ。 盗賊は戦士に正面からでは勝てない。 不意打ちや搦め手、小手先の技や数を頼む必要がある。 戦巫女は狐娘の身なりや身のこなしから目星をつけたのだが。 だからこそ、神官戦士に真っ向から話しかける盗賊娘を評したのだ。 だが、正解ではなかった。 「戦の神の姉妹様、お話よろしいですか」 神官の事を、兄弟・姉妹と呼ぶことはあるが、信心深い人間ぐらいだ。 盗賊が信心深い? 戦巫女は勿論、戦神の巫女であるから、盗賊には縁が薄い。 しかも、戦の神と前置きした。 「兄妹の事でお話ししましょうか。姉妹さま」 盗賊少女がどこからともなく取り出した、幸運神の聖印を見て。 「貴殿は……、あの茶屋にいた姉妹か」 兄のゴルドンの様子を覗き見た喫茶店に、幸運神の修道女がいた記憶がある。 グレドーラは、少なからず驚いた。 「ええ、ゴルドン兄貴の妹です。姉妹様」 盗賊にして幸運神に仕えるダキニラは、片目をつむりながらにっこり微笑んだ。