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オークの兄妹はらからと
「あの女、やっぱりゴルドンにコナかけてやがったか……」 「えっ、知り合いだったの。あのこはたしか伯爵家から王宮に出仕している……」 カフェの一角でエルフらしき男女が話し合っている。 二人の関心は奥まったところに座っている二人の男女。長身巨躯のオークの騎士?と、薄いピンク色のドレスを身を纏った人間の娘だ。 オークと人間のカップルはかなり異例だが、オーク、ゴルドンが筋骨隆々だが、オークにしてはやさしげな顔立ちなので、そこまで違和感がない。 「あんときゃそんな様子には見えなかったんだがな」 エルフの青年ブロントは、以前王宮でメイド服姿の、ゴルドンのデート相手とやりあったことがあった 「う~ん。彼女、人間至上主義者だと思ったけど。でもねえ。あの格好、どう見ても……」 ハーフエルフの少女、シルビアがわずかに顔をしかめながら答える。 彼女は賢者の学院の准導師ではあるが、もともとは貴族の出だ。 王宮に関わりはあるから、何か思うところがあるらしい。 とそこに。 「お主ら、こそこそ何をしている?」 掛けられた声に、二人はぎょっとなった。 口調が等の噂の相手、ゴルドンに似ていたのだ。 だが、その声はどう聴いても 「お主らは。エルフ殿と、賢者の学院の導師か。 こそこそと陰から覗き見とは良い趣味をしているな」 声をかけた主は、若いオークの女性だった。 だがその容姿は、頑強に鍛えられてはいたが、人間の女性とそれほど差異が無かった。 人間やエルフの目から見ても、十分に美女と言って通る。 角や牙と言った種族的特徴もそれほど強くない。 オーク風に着崩したファッションや、浅黒い肌に入れられたタトゥーが種族を強調していたが。 「あんた、なにもんだ?戦の神の神官様……」 ブロントは、彼女が剣を意匠化した聖印をぶら下げているのに気づいて問いかける。 赤いハートのイヤリングや、タトゥーも己の心臓や敵の心臓、命を表し戦の神のシンボルでもある。 戦の神は卑怯な行いを嫌う。神官が、彼らの行動を見とがめてもおかしくない。 「エルフの若長ブロント殿、アーゼリン様がご息女シルビア殿。 お初のお目にかかる。 ゴルドンの妹のグレドーラだ」 「なっつ!!」 予想外の言葉に、ブロントは呻きを上げる。 「えっ、いっ妹ですって!?」 シルビアは、妹という単語に強く反応した。 グレドーラは、ことさらに笑みを強くして問いかける。 「お見知りおきを願おう。ゴルドンのはらからどの」 ゴルドンの異母妹は、ゴルドンのはらから、異父妹に笑いかけた。