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ドレスとスーツとニット帽
「ブロント……」 サングラスをかけニット帽をかぶったエルフに、同じような格好をした美女が話しかける。 「うん? ・・・・・・。 あんた、シィルちゃんか? 見違えたぞ」 冒険者仲間で友人の妹であるシルビアは、いつもの賢者の学院の魔術師風の、 ローブや杖といった格好ではなかった。 なぜか髪の色も違う。 「魔法よ……」 シルビアが自分の髪を一房手にとると、色がいつもの銀髪に戻る。 「あんたは、あんまりかわらないわね」 性格までは魔法では変わらないらしい。 ブロントは、苦笑して受け流す。 「シィルちゃん、あんたもやっぱ気づいたか」 「まあね……」 もちろん、二人が変装してまで会っているのはデートなどではない。二人で共通の懸案事項があるのだ。 「あっ、来たわ……」 シルビアの兄であり、ブロントの友人である、オークの戦士にしてエンハンサー、 賢者のゴルドンがめかしこんで歩いてくる。 実は、二人ともきょうだいとして、友として、ゴルドンの様子がいつもと違うことに気づいていたのだ。 そして、本日。 「ゴルドン、意外にセンスがいいよな……」 ゴルドンの容姿は、鍛えられた戦士のそれだが、角さえなければ無骨な人間とも取れなくはない。 そんな彼が、人間の騎士風と言えばいいのか、スーツの上にコートを着て現れた。 そして、そのお相手は。 「あっ、あの女は……」 「あれ、あのこ……」 薄ピンク色のドレスに、ショールを羽織った、ほほをドレスの色と同じに染めた少女に、二人とも見覚えがあった。