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魔弾のクイーンと遊戯板
薄暗い部屋の中、少女が遊戯板を前にたたずんでいる。 「最強の駒は、王ではないわ。 それなら、女王なのかしら……」 少女は、駒の中の一つ。 やけに詳細に作りこまれた弓兵をつまみ上げる。 「違うわね……」 その駒は、弓を携えた美しいダークエルフの女性を模していた。 「知っているかしら。 東方のチェスはね。 捕まえた駒を、自分の味方にできるのよ。 ね、お母様。」 少女はそっと駒を盤面に戻す。 「それとも、その魔法の弓矢は私を貫くかしら。 優しい歌声が私を蕩かすかしら。 もしかして、見えない優しい精霊が、私を眠りに誘うかしら」 少女の顔に、薄闇の中でも影が差す。 「どれもみんな素敵だわ。 みんな、わたしと遊んでね」 少女は誰に語るかでもなく、呟いた。