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猫と金髪銀髪と
「うわ~、この女の人、すっごくきれい。 悪の魔法使いね。 それに、大人の女って感じ 黒猫を抱きながら、やっておしまい!! こんな人がやると絵になるのね」 ブロント少尉は、ゲームをやりながら、悪の女幹部の顔出しシーンを食い入るように見ている。 そこでふと、ブロント少尉は自分の顔と体をまじまじと見降ろす。 「子供っぽいのかな?」 ブロント少尉は、自分の見た目を意外と気にしていた。 日本人の中に混じったらそんなことはない、年相応とみられるのだが。 それに子供っぽく見られるのは、容姿が原因ではない。 「もうちょっと、妖艶な、大人の雰囲気になれば・・・・・!! 隊長だってもっと色々と……、うひ!!」 身体をくねくねとさせて、気色悪い笑みを浮かべる。 「猫捕まえてこよっと!!」 (そんなところが子供っぽいんだけど、せいぜいあなたがとっ捕まらないようにね。 特に富士見中尉、まちがい、2等軍曹にね…… むにゃ~) もちろん、同室のシルビア伍長がいたのだけど。 寝ぼけながら半分起きて様子をうかがっていたのだが、当然の様に止めるつもりもない。 基地の外縁部。 「は~い、子猫ちゃん。おねえさんといいことしない~。 ついてきてくれたら、クジラ缶あげるよ~」 黒い服をきた、怪しげな女が客引き、もとい猫引きをしている 「そこにだれかいるか!!」 「やば!!」 でっかい黒猫が、小さな黒猫を小脇に抱えると、素早い動きで壁を駆け上り、屋根を蹴って夜空に消えていく。 「ブロント少尉がいたような……、あら?」 足元に、封があいた缶詰がある 「いまだにこんなもの残ってたのかしら」 クジラの絵が描かれた缶詰を見つめながら首をかしげる富士見2等軍曹だった 「さーてと、こんな感じかしら」 自室に、黒猫を抱えて、窓からこっそり戻ってきたブロント少尉。 ちなみに、ここは三階である。 窓期に椅子を持ってきて、黒猫を片手にポーズをとってみる。 「こんな感じかしら。猫ちゃん、ちょっと大人しくして」 黒猫を膝に乗っけようとするのだけど、何か気に入らないらしい。 ばたばた暴れている。 「ちょっと、そんなにあばれないで!! うっ、ぎゃあ~!!」」 夜の兵舎に、少女の絶叫が響き渡る。 太ももを思いっきり引っ掻かれたらしい。 「まったく、何をやっているんですか……」 明かりがついてシルビア伍長が起きだした。 もちろん、ブロント少尉が抜け出して、こっそり、それこそ猫のように戻ってきたのは気付いていたのだが。 あんな大声を出されて、寝ているふりもできない 「変なことしなくたって大丈夫ですよ。そのままでもあなたは十分魅力的ですから」 ブロント少尉の太ももの傷を手当てしながら、シルビア伍長は思わずつぶやいてしまう。 なんでそんなことを口に出したのか、伍長は自分自身で驚いてしまったが。 「ごめん、ありがとう。」 ブロント少尉は、普通にスルーした。 黒猫が、ブロント少尉のベットで丸まりながらあくびをした。