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プリンと金髪黒髪と
「うーん、やっぱり日本のスーツは絶品ね。」 「ブロン子ちゃん、スイーツ大好きだよね」 なんでもパクパク食べては美味しいを連発する友人を、楽しげに見ながら言う御宅さん。 「特に今日は、このプディングが最高!!」 丼みたいにでっかいプリンを前にして、ご満悦だ。 「うらやましいわ。ブロン子ちゃん。そんな量を食べても平気なんて」 「基地の子たちはこのぐらいペロッと……」 とそこまで言って、周りの人はどうかと見渡すブロント少尉。 ふと、少し離れて席で一人でスイーツを食べている女子高校生を発見する。 「食べてる女の子もいますよ!!ほあら、あのプリンみたいな頭の子!!」 その言い方に、ぎょっとする御宅さん。 「根元は黒髪なのに、途中で茶色になるんですね。まるでプリンだわ!!日本人には不思議な髪の人がいるのね」 さほど大声ではなかったが、ブロント少尉はいろいろと目立つ。 はたして、プリンを食べていた女子高生は、泣きながら立ち上がると、店から走り出てしまった。 唖然として見送ったブロント少尉だったが。 「ブロン子ちゃん……」 そこで、少々厳しい御宅さんの声で我に返る 「人の服装や見た目を、そんな風に指摘しちゃだめだよ……」 本物の金髪の、外人の美少女に容姿をデスられたら、泣きたくもなるもんだ。 オタクの美学は人に迷惑をかけないことだから、友人としてブロント少尉の言動は見過ごせなかったのだ。 ブロント少尉もアホだが馬鹿ではないので、何か理由があって、あの髪だったことはわかった。 「わたし!!謝ってくる!!」 店から飛び出して、パルクールの試合中かというぐらいの身のこなしで走っていくブロント少尉。 「間違いをすぐ認めて正そうとするのは、ブロンコちゃんのいいとこだね……。余計逃げられるような気もするけど」 「ちょっと!!あなた!!」 「ひいい!!」 いきなり塀から降りてきて目の前をふさいだ黒い人影に、女子高生は絶叫を上げる 当たり前だ。大の男だろうと、それこそ兵士だろうと、いきなり軍服っぽい服をきた金髪少女に襲い掛かられたら悲鳴を上げるだろう。銃を持っていたら発砲するかもしれない。 「なっ、なっ……、なんですか……」 少女は、涙を浮かべ、おびえながら答える。 そこで、ブロント少尉は、息を整えてから頭を下げる。 「さっきは、貴女を不快にさせるようなことを言ってごめんなさい。 私、日本が大好きで、日本の人や物、なんでも素敵に思えちゃうんです。 ごめんなさい」 「わざわざ追いかけてきたんですか。そんな……、いいのに」 女子高生は泣き笑いの表情で受け入れた。 二人の少女が、喫茶店で仲良くスイーツを食べている。 そんな様子をみて、二人より少し年上のオタク女性が微笑みながら呟いた。 「よかったね。ブロン子ちゃん」 ブロン子、もとい、ブロント少尉に、日本人の普通の友達ができたらしい。