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街道の黒天使と愛の騎兵団
ひどい、焼き討ちにあったんだわ。 黒いライダースーツに、金髪をポニーテールにした少女が、バイクに乗りながら、炎に包まれた村を見渡している。 たしか、この辺りは、ハート様の縄張りのはず 少女は、彼女の部隊と協力関係にある民兵組織のリーダの顔を思い浮かべる。 そのリーダーは、奇矯で恐ろし気な外見ながら、行動人格には愛嬌と慈愛を感じられ、町の老若男女、 堅気筋もの、傭兵軍人を問わず慕われている。 軍の所属である彼女も、回想の中でも思わず様付で呼んでしまうほどだ。 バイクを降りて、被害の状況を詳しく見分している時だった。 高速で町の外から道を突っ込んでくる車がある。 いわゆる、テクニカルだ。 一台だけではない。 乗員が武装しているのがここからでも見て取れる。 「あいつら、のろし代わりにこの村を燃やしたっていうの?」 少女は、銃を確認しながら、バイクに飛び乗ると、激しく後輪を空転させながら発進する 「ブラックベータよりブラックシックス、敵ゲリラ組織による、村落襲撃を確認。 敵哨戒部隊の追撃をうける」 偵察隊の、司令部にインカムで通信を送る。 「こちら、ブラックシックス。直ちに救援をおくる。協力組織が先行するやもしれない。誤認するな。幸運を祈る」 比較的街道が整備されている地域だったので、車両による移動は楽だったが、部隊が広がりすぎた。 「了解、戦場の死神は、戦場では死なないわ。また会いましょう」 少女は片手でショットガンを打ちながら応答する。 いけない。パワーが違う。 舗装道路のために、車両の性能差が現れやすい。 隘路を走破する時以外は、バイクは4輪車の敵ではない。 乗せられる兵隊の数も、武器も、何よりあらゆる安定性で負けている。 テクニカル荷台からの射撃が、バイクの燃料タンクを打ち抜いた。 「きゃっ!!」 少女の体をすれすれ掠める敵の銃弾 。 タンクから燃料があふれでる。 間一髪で飛び降りた少女。 だがしかし、敵の先行か、待ち伏せしていたバイク部隊に囲まれそうになる。 ここまでかしら。 隊長。 もうちょっと、あなたに、だ・・・、お付き合いしたかったけど。 そのとき、バイクに乗った、軍服姿の軍人が、バイクごと少女の前に割り込んできた。 「待たせたな。少尉!!」 民兵の一団、少女を追跡していたのとは、別の組織と、その服装からわかる一団が続いて現れる。 「ぐふふふ、間に合ったみたいですね」 やたら、スキンヘッドや、モヒカン、肌をさらしたものが多い新たな集団の中から、一際異彩を放つ、 非常に太った、スキンヘッドでドジョウ髭を生やした中国人の巨漢が現れる。 ハートがトレードマークなのか、同じ意匠の刺青やアップリケを身に着けている 「わたしのシマで好き勝手してもらった落とし前を付けさせてもらいましょうか」 「ひゃっは!!」 「げひゃひゃひゃ!!」 「ぶっこわしてやるぜえ!!」 ハート漢の号令の下に、モヒカンの一団が進み出て、少女を追跡していた一段と対峙する。 元から数も違ったのだが、強さも気合も見た目も、ハート漢以下モヒカンたちの方が上だったらしい。 すぐに勝負はついた。 「隊長、ちょっと期待していました。」 smooch!! 「やれやれ、とんだ死神もいたもんだ」 隊長が少女を抱きしめながら呟くと 「ひゃはああ!!」 「ひゃっほう、見せつけやがるぜ!!」 「ぶひひひひひ」 ハート漢とモヒカンたちがはやし立てた