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呪いのチョコレートとランプの魔人

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2025年03月03日 16時10分
使用モデル名:CustomModel(その他)
対象年齢:全年齢
スタイル:リアル
参加お題:

木々がさやさやと囁くエルフの村。その外れに、チョコレート作りを得意とする少女――名をショコリーヌという――が住んでいた。彼女は決して悪い子ではないのだが、朝は決まって大遅刻、昼は自分勝手にふらりと散歩、夜は戦士のドワーフの相棒にボヤキをぶつけては逆切れするなど、周囲の思惑を跳ね飛ばすように日々を送っている。そう、いささかマイペースなのだから仕方がない。 ある夕方、ショコリーヌは村長から預かった「禁じられたチョコレート」の包みをうっかり食べてしまった。ちょっとだけならいいと思ったのが失敗だった。その瞬間、どこからともなく古ぼけたランプが落ちてきた。地面に転がったそれを拾い上げると、まばゆい閃光とともに魔人が顕現したのだ。 「ほほう、なにやら面白い香りがするじゃないか。ふふふ、これからお前が思い浮かべた人物を当ててやろう」 「えっ? ちょっと待ってよ。……まさかアキネーター!!」 ショコリーヌは驚きのあまり、思わず声をあげる。だが、その魔人はにやりと不敵に笑うと、まるで誰かと話しているかのように質問を投げ始める。 「その人はグループで活動していた?」 「いや、間に合ってます。というか、勝手に話を進めないで!」 ショコリーヌは黙ってランプを封じようとするが、魔人はいっこうにやめる気配がない。彼女の腕をすり抜けるように、さらに問いを重ねる。 「実際に存在する?」 「いいから黙れよ! まさか本当にアレを再現するなんて……」 魔人は首を傾げつつ、目をぎょろりと回してショコリーヌを観察する。そこへ、鍛冶屋の仕事を終えてきたドワーフの相棒が姿を現す。だがショコリーヌは素っ気なく舌打ちするだけだ。どうやら、いつもの通り仲は良くないらしい。 「おいショコリーヌ、そのランプはなんなんだ?」 「ん? ああ、呪いのチョコレートを食べたら出てきたのよ。で、このギョロ目魔人が質問攻めしてくるの。『冗談、顔だけにしろよ』って言いたいくらいだけど……どうにかしてよ!」 ドワーフはショコリーヌに適当な皮肉を言おうと口を開きかけるも、「またお前か」的な視線で睨まれ、結局ろくに反論もできずに立ち尽くす。その空気など意に介さず、魔人は楽しげな表情だ。 「ふふふ、やはりカカオの呪力には不思議な力があるな。」 「やかましい! そんなチョコ二度と食べないから! ああもう、チョコレートは甘く苦いよ。恋と一緒だな。……というわけでとっとと帰りなさい!」 ショコリーヌは憤慨した様子でランプを思い切り振り回そうとする。すると、ぶわっと怪しい風が巻き起こり、魔人はうたかたの夢でも見るようにふわふわと消えかける。最後まで気色ばんで質問しようとするも、声はもう遠い彼方へと消え失せてしまった。 ホッと安堵するショコリーヌの横で、ドワーフが腰に手を当てて不機嫌そうに呟く。 「おい、俺にも少しは説明したらどうなんだ? いきなり騒がれて迷惑もいいところだぜ」 「へいへい、わかってるってば。あとでウチの新作チョコ食べてみてよ。……きっと世界一おいしいはず、うん、多分」 その言葉に、ドワーフは苦虫を噛みつぶすような顔を見せるが、どうやらこれ以上文句を言っても無駄だと悟ったようだ。二人は仲良く罵り合いながら、元気に村の方へ戻っていく――かと思いきや、どこか微妙な距離感を保ったままである。だが、ショコリーヌの口元には妙な笑みが浮かんでいた。 やがて夜が訪れ、村の小道にはほのかなランタンの光がともる。禁断のチョコレートの呪いはどうなったのか、結局解決したのか、何もかもがあいまいなまま。だがショコリーヌはいつものように自信満々な足取りで帰途につくだけだ。 村の風は柔らかく、月を隠す雲は大河のようにゆったりとたなびいております。遠くには樹木の息遣いが揺れ、星々はまるで泡の粒が連なるように瞬いているのです。今宵の森が描き出す情景は、つかの間の戯れを見届けた者たちへの礼讃。高く透き通る夜空の方角から、優しい風がショコリーヌたちをそっと包み込み、また新しい物語を始める準備を整えているようにも思えます。どうやら光と影が交錯する世界は、まだまだ甘くて苦い奇跡を隠し持っているようでした。

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いいねコメントありがとうございます。忙しくなって活動を縮小しています。返せなかったらすみません。

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