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魔道列車強盗
「はあ~」 狐耳の少女が、魔道カメラを手にして、車窓からの景色を取っている。 ダキニラは新聞記者の肩書で、魔道列車とその行先の取材を任されたのだ。 「しばらく王都を離れろってことか……」 新たにできた、ちょっと物騒な友達、リリスの事だろうというのは解った。 コンサートホールで、リリスと微妙な空気になった後、引退した盗賊らしき執事に忠告されたのだ。 半端な覚悟ならば、リリスと関わらないほうが良いと。 直接利害があるわけではなく、幸運神の巫女と知って話しかけてきたのだ。 一応、悪意無き忠告だったらしい。 それだけに堪えた。 さらに、新聞社に戻るとこの取材の話だ。 関わりのない執事が知っているのだ。 家族のような絆がある新聞社の面々が知らないわけがない。 ダキニラがいないうちに話を付けるとでもいうのだろう。 「あたしは、おせっかいだったのかな~。 幸運を分け与えるつもりが……」 さらに落ち込んで、ぼうっとカメラを構えるダキニラ。 無意識にシャッターをパシャパシャおとす。 「平和だな……」 とそこにだった。 ものすごい大音がして列車が急停止する。 ぼーっとしていてもそこは盗賊、投げ出されることもなく傾く車内で姿勢を保つ。 「列車強盗だ~!!」 「うなっ、ありゃあ、魔族か!!」 「魔族だ!!魔族の襲撃だ!!」 人間でも、もちろんオークなどの人族でもありえない、人型の巨体が列車を持ち上げ叩き壊す。 人間に似た体格の小柄な魔族が、物騒な魔法を乱射しながら暴れ回っている。 獣に見えるが、明らかにクマより大きい獣が身の毛もよだつ咆哮を上げる。 めらめらと燃えるかのような赤い瞳から、まるで火が吹き出し辺りを燃やしているかのような暴れぶりだ。 「やれやれ。落ち込んでいる暇もないか……」 幸運神の巫女のお仕事は、幸運を分け与える事だけではないらしい。