1 / 10
月夜の死合い
くっ、手強い!! エリザベータは、単身デーモンに立ち向かっていた 彼女は優秀な魔法戦士だが、相手が悪すぎる 巨大なデーモンの頑強な肉体に、彼女の剣は軽すぎるのだ かと言って、生半可な魔法は通用せず、かえって隙を作る 修練に基づく技術で剣をあて、身のこなしで、牙を爪をかわすが…… 分厚い毛皮に、鋭い爪、魔法を使うために鎧が薄い彼女の細身の身体は、デーモンの一撃を食らえば、致命傷を負いかねない そして………、ついにそのときが来た キャッ!! デーモンの右手の一撃は、エリザベータの身体を捉えた うすい鎧ごと、メイド服が切り裂かれ、剣が弾き跳ばされる こんなところで…… 申し訳ありません…………さま 勝利を確信したデーモンが咆哮を上げる それがエリザベータが最後に聞いた声 「ヴァルキリージャビリン!!」 ではなかった。 中性的だか、力強い声で、不思議な響きの詠唱が耳に届く その声の主は、彼女が最後に呼ぼうとした名前だったのか…… す、凄い、センセ、やっぱりすごく強いんだ!! カタリナは、杖を握りしめたまま固まっていた エリザベータの危機に現れたブローナは、たった一撃の魔法で屈強なデーモンを屠ったのだ カタリナも見知った先輩である、エリザベータを助けようとしたのだが……、 その間もなかったのだ それにしても、何かしら、あの魔法? 精霊魔法だろうけど あんな強力な魔法……… 戦乙女の槍? まさかね 勇気の精霊の力を借りるその魔法は、男性にしか使えないはずなのだ