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「ティッシュ売りのエルフィーナ」
第一話: 「冷たい風と温かい出会い」 風が街角を駆け抜ける。冬の寒さが身に染みる中、一人のエルフの女戦士が立っていた。彼女の名はエルフィーナ。長い金髪をなびかせ、緑の瞳は何かを探しているようにキラキラと輝いていた。 「ポケットティッシュ、いかがですか?」エルフィーナは通行人に声をかける。彼女の手には、小さなティッシュのパッケージが握られていた。 エルフィーナは、その日も一袋のティッシュも売れないので、家に帰る勇気が湧きませんでした。お父さんはぜったいほっぺをぶつにちがいありません。彼女の心は重く、寒さだけが身にしみていました。 そんな彼女の前に、ふと思いつきが閃きました。ティッシュを燃やして、少しでも暖を取ろうと。エルフィーナは一枚一枚、ティッシュを燃やし始めました。 すると、不思議なことに、燃えるティッシュからガチョウの丸焼きが現れました。暖かい光と共に、美味しそうな香りが広がります。 「冗談、顔だけにしろよ」と、エルフィーナは自分自身に突っ込みを入れながらも、ほっと一息つきました。 そして、最後の一袋を燃やした時、信じられないことが起こりました。彼女が子供の頃から慕っていたおばあさんが、煙の中から現れたのです。 「エルフィーナ、私はずっと君のことを見守っていたよ」とおばあさんは言いました。 エルフィーナはおばあさんと抱き合い、涙を流しました。久しぶりの再会に、心からの喜びが溢れていました。 星空の下、二人は丸焼きのガチョウを囲みながら、昔話に花を咲かせました。 朝になると、エルフの戦士がかべによりかかって、動かなくなっていました。ほほは青ざめていましたが、口もとは笑っていました。 その手の中に、ティッシュのもえかすの束がにぎりしめられていました。「この子は自分をあたためようとしたんだ……」と、人々は言いました。 でも、エルフがティッシュでふしぎできれいなものを見たことも、おばあさんといっしょに新しい年をお祝いしに行ったことも、だれも知らないのです。だれも……