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匠の技
「え~、本当にブロントが潜入するの?無理があるんじゃない?」 少々厄介な潜入調査の依頼が来ている。 勿論、新聞社(盗賊ギルド)が一枚かんでいるので、結構危険な依頼だ。 「私が魔法使ったほうが早いんじゃ……」 シルビアの魔法にはディスガイズ(変装)やシェイプチェンジ(変身)の魔法もある。 「シィルちゃん、得物使えねーべ。魔術師一人じゃ危ねーぜ」 シルビアはこの頃体術の訓練も受けているが、手習いレベルだ。剣術や格闘術と呼べる域までは達していない。 「たぶん、相手にも盗賊が絡んでいるからね。ブロントさんなら適任なんだけど……」 依頼を持ってきた新聞記者、ダキニラが続ける。 エルフのブロントは優れた精霊使いにして戦士でもあり、さらに盗賊の心得もある。 オークの重戦士、ゴルドンとも、いいところまでやりあえる強力な冒険者だ。 「だからって、女装って、盗賊の変装が見事なのは知っているけど……」 そう、潜入先は、賢者の学院とは別の、女学院なのだ。 「まあ見てろって」 数分後。 「こっ、これは、すごいわね・・・・・」 現れたのは、ロックバンド風の衣装に身を包み、髪をアップにしきつめのメイクをした、長身のエルフの美女だった。 「驚いたでしょ。手伝った私もびっくり!!」 「どうよ!!ビッときたろ!!これで、上着着て、マフラーとか付けておきゃあ、ばれねーべ」 口調と態度までは成り切れていないらしい。