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友(強敵)と
「二人とも、何考えているの」 アーゼリンとシルビアの二人はリングサイドの長机に座りながら、あきれ返ったダキニラに語り掛けられている。 「こんなイベント乱入したり、魔法使ってぶち壊したら、(盗賊)ギルドや興行主が黙ってないよ」 ゴルドンの対戦相手にすり替わったアーゼリンと、リングに乱入して睡眠魔法を放ってゴルドンもろともアーゼリンを眠らしたシルビア。 「ブロントさんが対戦相手買って出てくれたから何とかなったけど」 新聞記者の肩書もあるダキニラは、イベントの取材の体で来ていたが、盗賊ギルドメンバーであることを生かして異常事態の収拾に素早く動いた。 「大丈夫だ。ゴルドンもブロントも素晴らしい若者だ。立派な試合をしてくれるぞ」 天然にずれたことを言うアーゼリン。 「このお母様を放っておくわけにはいかなじゃない……、悪かったわよ」 不貞腐れながらも、反省するシルビア。 リング上では、オークのゴルドンと、圧倒的な体格差にも拘わらず五分の戦いを繰り広げた、エルフのブロントが、お互いの健闘を讃えてハイタッチをしている。 「ゴルドンは良い友人に恵まれているな」 そんな様子を見ながら、アーゼリンが感心したようにつぶやく。 「やっぱり面白くない……」 シルビアはぼそりと呟いた。