【掌篇】魔術の師匠 3
まさかまさかだ。歴史に何度も名を残し今なお存命という、超長命の魔術師殿の拠点が、まさか首都オースタルの住宅街エリアにあるだなんて。 てっきり雲が霞むような高い山のてっぺんだとか、霊験あらたかな薬草の育つ樹海の奥深くに居を構えるものだと思っていたのだが。 とはいえさすがは伝説の魔術師、住宅街にありながらこの家は極めて高度な魔術的欺瞞を施されており、ある一定以上のレベルの者でないと、何かが隠れていること自体にすら気付けない。この国の宮廷魔術師だって気付いてはいないだろう。 逆に言うと、何かが隠れていることに気付けた時点で一流、カウベルを鳴らしてドアを開けてもらえた俺は、超一流と言えるのではないだろうか。 「いや、買い物行こうとしたら、ドアの向こうに君がいただけなんだが…」 あれえ?