さよなら、地球/スマホ壁紙アーカイブ
【さよなら、地球】 彼女は窓の向こうに浮かぶ青い星を見つめていた。 音のない宇宙のなかで、地球だけがやさしい灯のように揺れていた。 かつて呼吸をしていた空、笑い声の重なった日々、 ひとひらの風さえも、もう手の届かないところへ滲んでいく。 心の奥で何かがほどけていく感覚があった。 それは悲しみとも違い、ただ静かに流れていくものだった。 言葉にならない想いがそっと胸の奥で形を変えて、ひとしずくの光になる。 すべてを捨てたわけではない。 けれど、すべてを連れていくこともできなかった。 宇宙という名の静けさの中で、彼女はひとつの季節を終えるようにそっと地球に背を向けた。 船は無音の中を漂うように進み、時間だけが音のない雨のように降り積もっていった。 まぶたを閉じると、そこにはまだ青があった。 遠く、やわらかく、消えかけた夢のように。