初日の出を見に

自然公園からロープウェイで登れる展望台に、玄葉と一緒に初日の出を見に来ました。インドア派の玄葉の事、誘っても来ないかなと思ったのですが今日は一緒に来てくれました。 「まあ、せっかくだから。しかし思ったより寒いわね、意外と雪があるし」 「ここは展望台だからね、この間幽魅が雪だるま作ってた日の雪が溶けずに残ってるんだろうね」 「やめてよ思い出すだけでも体が冷える錯覚を覚えるじゃない」 我々雪まみれになったからなぁ・・・でもそのおかげで玄葉と一緒にお風呂に入る約束を果たせたし。 「おいお兄。お風呂の事考えてるでしょ」 「何で分かるの・・・」 「やらしい顔してた」 「やらしいって・・・ていうか玄葉、その日以降たびたびお風呂に一緒に入るように誘ってくるのはそっちじゃん。それはやらしくないの？」 私が指摘すると、玄葉はべしべし私を叩いてきます。 「だって一回見られたからにはもう何回見られてもあんまり変わんないし、ガス代もったいないし、そもそもお兄に欲情とかしてないからやらしくない！」 「だからってこの歳の兄妹でお風呂入るの割と世間一般的に考えるとやばくない？」 「そうですよ、もし間違いが起きたら近親相姦になっちゃいますよ？」 話し合っていた私たちの声に、涼やかな声が割り込んできました。振り返ると、瑞葵ちゃんがこちらを見て微笑んでいます。 「あれ、瑞葵ちゃん！？」 「凪さん、玄葉さん、あけましておめでとうございます」 「「あけましておめでとうございます」」 挨拶を返した私たちですが、瑞葵ちゃんいつからいたんだろう・・・ロープウェイに一緒に乗っていたのかな。 「それで、どうしてお二人は一緒にお風呂に入る話を？」 「あー、いやそもそものきっかけは雪の話だったんだけどね」 「そこから近親相姦まで話が派生するのどうなってんのよ・・・でもまあ、お兄とは何回かお風呂入ったけど、一度も手出しされてないから心配ないと思うけど」 「ああ、そうですね。凪さんその辺はちゃんと紳士ですからね。私と一緒に温泉入った時も触って来ませんでしたし。・・・写真は撮ってましたけど」 瑞葵ちゃんがあの夏の事を思い出して笑うと、玄葉がすごい圧の視線を向けてきました。 「おい。写真ってなんだ」 「えっあっその」 「撮ったの？裸の瑞葵ちゃん撮ったの？」 「は、裸じゃないよ！水着とか湯浴み着とか着てたからセーフ！」 「あと一緒に温泉って・・・まさかとは思うけど、お盆前に私が誘いを断ったやつじゃないよね？あれ一泊の旅館だったでしょ。だとしたらお兄、恋人でもない女の子と一泊二日の温泉旅行行って一緒に部屋付きの露天風呂に入った事になっちゃうけど。まさか、ねぇ？」 「えーとえーと」 芋づる式に私の立場が危うくなっていく。おかしいな、どうしてこうなったんだ。 「やっぱり、お兄と瑞葵ちゃんってお付き合いしてるんじゃ」 「あ、それはないですね。私は凪さんの彼女にはなりません」 「うん、とりあえず恋人同士になる予定はないかなぁ」 瑞葵ちゃんと顔を見合わせて「「ねー」」と二人で意思の一致を確認。玄葉はそれを見て頭の痛そうな顔をしてきます。 「その距離感で付き合ってない事ある・・・？」 あるんだなぁこれが。 「ふふ、では凪さん、玄葉さん。私はそろそろ失礼します。凪さん、今度私の家に遊びに来た時には私とおねーちゃんと3人でお風呂入りましょうね」 「向日葵ちゃんを巻き込むんじゃありません！あとそもそも瑞葵ちゃんの家行かないから！お父さんにバレたら私、即斬首じゃん！」 瑞葵ちゃんが帰りのロープウェイ乗り場に消えると、私と玄葉が取り残されました。他の初日の出を見に来ていた人たちも、少しずつ帰っていきます。 「私たちも帰ろうか」 「今は帰りのロープウェイ混んでるから、もう少し待ってましょ。お兄にはちょっと聞いておきたい事も色々できたし、ね？」 玄葉がにっこりと笑います。やだ、何か怖い。新年早々なんでこんな目にあうんだろう。