心霊探偵アリス　二章

第2章: 消えた少女の痕跡 「アヤカは、とても明るい子でした」ミチコは古いアルバムを開きながら話し始めた。「でも、最近少し様子が変わってきて…」 アリスは注意深く耳を傾けながら、写真に写る少女を観察した。長い黒髪に愛らしい笑顔。しかし、最近の写真では、その笑顔が少し曇っているように見える。 「変わったというと、具体的にはどんな様子でしたか？」アリスが尋ねた。 「そうですね…部屋に閉じこもることが多くなったり、夜中に奇妙な悪夢を見て叫んだり」ミチコは眉をひそめた。「そして、よく『仮面の男』という言葉を口にするようになったんです」 「仮面の男…」アリスは言葉を反芻した。その瞬間、部屋の空気が変わったように感じた。 「アヤカさんの部屋を見せていただけますか？」 ミチコに案内され、アリスはアヤカの部屋に足を踏み入れた。一見、普通の女子高生の部屋に見える。しかし、アリスの目は即座に部屋の隅に引き寄せられた。 そこには、薄い影のようなものが揺らめいていた。普通の人には見えないが、アリスにはそれが少女の霊だとわかった。 「アヤカさん？」アリスが静かに呼びかけると、影が震えた。 ミチコは不思議そうな顔でアリスを見ていたが、何も言わなかった。 アリスは慎重に霊に近づき、交信を試みた。断片的なイメージと言葉が、アリスの心に流れ込んでくる。 恐怖。暗闇。仮面。儀式。 そして、「助けて」という悲痛な叫び。 アリスは目を閉じ、深呼吸をした。アヤカは生きている。しかし、どこかに閉じ込められているようだ。そして、何かあるいは誰かを恐れている。 「佐藤さん」アリスはミチコの方を向いた。「アヤカさんは生きています。でも、危険な状況にあるようです。彼女を救出するには、もっと調査が必要です」 ミチコの目に涙が溢れた。「本当ですか？生きているんですね。お願いです、アリスさん。アヤカを助けてください」 アリスは頷いた。「必ず見つけ出します。それで、アヤカさんの友人や、最近会っていた人について教えてください」 ミチコの話から、アリスはいくつかの手がかりを得た。アヤカの親友の名前、彼女が通っていた学校、そして最近頻繁に訪れていた古い寺院の情報だ。 「ありがとうございます」アリスは立ち上がった。「これから調査を始めます。何か新しいことがわかったら、すぐに連絡します」 家を出たアリスは、頭の中で計画を立て始めた。まずは親友に会い、そして学校を訪れる。そして最後に、その古い寺院を調べる必要がありそうだ。 街を歩きながら、アリスは周囲の霊たちの様子に目を配った。普段より多くの霊が、不安そうにさまよっているように見える。何か大きな力が、この街の霊的なバランスを崩しているのかもしれない。 アリスは水晶のペンダントを握りしめた。これから始まる調査が、単なる失踪事件ではなく、もっと深い闇に繋がっていることを、彼女は予感していた。