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卒業生と新入生
「諸君、本日をもって、君たちは賢者の学院を卒業となる」 いかにも魔術師といった老人が、壇上で演説をしている。 見た目と違って、いまいち人望はないのか、演説を聞いている卒業生たちは退屈そうだ。 いや、見た目通りかもしれない。この手の、長いあごひげを生やしてもったいぶっている老人など、たいがい美人秘書にことあるごとにセクハラしているスケベジジイだと相場が決まっている。 「そこでぢゃ。君たちの餞に、王都、いや、この国一番の吟遊詩人に、詩を詠んで貰うことにしたぞ」 そこで、スケベジジイは本性を現して、ニタリと笑いを浮かべる。 ダークエルフの美女が、壇上に現れると、会場の空気が一変する。 「はあ~やっぱり……」 シルビアは、舞台袖で、熱唱する母の様子を見ながらため息をつく。 あのスケベジジイが興奮するような、王都一の吟遊詩人など、一人しかいない。 アーゼリンの歌声はリュートの調べに乗って、学園中どころか王都中に響き渡りそうだ。 ついでになぜか鳥の大群が空を舞い、季節外れに校庭の隅々にポンポン色とりどりの花が咲きだす。 「また、けったいな魔法を使って。ポンコツダークエルフ・・・・・・・」 アーゼリンの歌声に感極まったのか、卒業の実感がわいたのか、そこかしこで抱き合う卒業生や、 下級生たち、男女を問わず、カップルを問わず……。 「学園か……、良いものだな。通ったことが無い……」 演奏がおわり、アーゼリンはぽつりとつぶやいた。 「オールド・スレイマン。少しお願いがあるのだが……」 ダークエルフの美女に話しかけられたスケベじじい、ことスレイマンは、にやけ顔を強めるが、 天衣無縫天然長寿のアーゼリンは気にしない。 「……」 小声で、何やらスケベジジイに頼む褐色美女。 「なんじゃ、今更じゃの。シルビアちゃんに教えてもらえばよいのにの」 「シルビアに教わるのは、なんかやだ……」 ぷくっと、顔を可愛らしく膨らませるアーゼリン。 「ほほほ、そうか、まあ娘に教わるのもな。それじゃわしが教えてやろうかの。手取り足取り、腰」 「くぅおーら、ポンコツになにしようっていうのよ!!すけべじじ……、オールド・スレイマン!!」 一週間後の入学式の後。 「くぉーら!!ポンコツになに吹き込んだ!!このスケベジジイ!! 似たようなフレーズを叫びながら、シルビアは学園長室に飛び込んでくるのだった。