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隠し味はアンデット?
「チェチェ、どっ、どうするクマか。こいつら、アンデットにはプーにゃんの爪はほとんど効かないクマよ」 辺りをアンデットに囲まれ、クマ獣人の少女が焦っている。クマそのものの両手を振り回せば、スケルトンの骨はばらばらになるが、しばらくすると集まってまた動き出す。粉々にすれば動かないみたいだが。 「頑張って!!もう少し!!」 相棒のドワーフの少女チェチェ、ことチェルキーも戦斧をふるいながら答える。 「こんな洞窟に、食べ物があるわけないクマ!!腐った死体なんていらないクマ!!」 「そうでもないよ」 ドワーフの少女が装備入れから、何かを取り出して指にはめながら言う。 「魔素を吸った変わったきのこや薬草が生えていてね。魔法の素材だけど、食べてもおいしいみたいだよ」 「ほっ、本当クマか!!チェチェ!!」 途端にクマ娘の動きが良くなる。 「我が心よ。敵を討つ刃となれ」 チェルキーが指輪を嵌めながら共通語で唱えると、指輪から眩しい光が漏れて、チェルキーの戦斧と、 クマ娘プーにゃんの両手の爪に吸い込まれる。 コモンマジック、魔法使いが使うごく簡単な魔法を、一般人でも合言葉だけで使えるようにしたものだ。 何かシンボル的な物品、指輪などに込められて、使い手の精神力を用いて何度でも使える。 チェルキーが使ったのは、エンチャントウェポン(魔法付与)の魔法だ。 「さあ、これでもう邪魔はないよ。早くご飯をにしよう」 魔法の加護を得た、大戦斧とクマのカギづめが、アンデットたちを骨の残骸と腐肉に変えるのに、一分もかからなかった。 「キノコ料理美味しいクマ」 彼女達の食欲の前には、立ち塞がるアンデットはなんらの障害にならないらしい。