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おでこの光と柔らかさ
「あら、お兄様、どちらに出かけるのですか」 ハーフエルフの魔術師シルビアが、オークの戦士に話しかける。 「うむ、わが師の元へだ。ちと、相談したいことがあるのでな」 オークの戦士、ゴルドンが答える。 「師って、エンハンサー(内功術)のですか」 ゴルドン、シルビアと種族が違うが、二人はきょうだいだ。 二人は戦士と魔術師と、まったく逆のスキルを持つが、二人とも賢者の修行を積んでいて、賢者の学院に籍がある。 共に、体術教官、准導師として生徒に教える立場なのだが。 (お兄様の、先生か……。さぞや立派な方かしら。教育にも一家言ある方に違いないわ) 「私もご一緒させて頂いてよろしいですか」 (お兄様の方が人気があるなんて納得いかないわ。お兄様の先生なら、秘訣を知っているかも) なぜか学園の教師としては、無骨なゴルドンの方が、可憐な容姿のシルビアよりも子供に人気があった。 「・・・・・・、あまり勧めはしないが。来たければ共に参ろう」 微妙な兄の表情に、思い込みが激しいシルビアは気づかなかった。 「おお、ゴルドン、よく来たな」 連れだって東洋風の屋敷を訪れた二人を、禿頭の老人が出迎えた。縁側で何やら雑誌を読んでいたらしい。 70過ぎに見えるが、年不相応に鍛えられた肉体は、老いを感じさせない。 莞爾とわらうその額に、午後の陽光が反射してピカリと光る。 「御師よ。ご無沙汰している」 礼儀正しく頭を下げるゴルドンに。 「ふむ、息災なようじゃの。また一枚腕を挙げたな。 して、そちらの娘御は?」 一目でゴルドンの成長をみとった老師は、その隣のシルビアに目を向ける。 「ゴルドンの妹、賢者の学院准導師のシルビアと申します。 よろしくお願いいたします。御師様」 「ふむ……」 好々爺といった風情の老師の目が一瞬細められたのを、ゴルドンは見逃さなかった。 「御師。シルビアはなにやら教えを請いたいことがあるようだ」 「うむ……、よい心がげぢゃ」 老師は、読んでいた本を閉じると、縁側に置く。 「しからば、いささか揉んでやるとしようかの」 縁側に置かれた雑誌は、助平な本だった。 「きっ、きゃあ!!なにすんのよエロジジイ!!」 瞬間移動したかのような動きで背後に回った老師に、お尻を触られてシルビアは絶叫を上げる。 「うひょひょひょ。少々揉み甲斐がないかの!!」 プチ!! 「ぶっ殺す!!」 『マナよ、雷ととなりて我が敵を討て!! ライトニング!!」 怒りと共に放たれたシルビアの稲妻がエロ老師にせまる。 「うひょひょひょ、よいこころもちぢゃ。嬢ちゃん、按摩師でも食っていけるぞ」 エロ老師は、稲妻に身を任せ、気持ちよさげに目を細めている。 「御師。そのぐらいで許してやって頂けないか」 見かねたゴルドンは割って入る。 「シルビア、そのように心を乱していては、相手に話が伝わらぬぞ」 兄のゴルドンアは、シルビアの事をよく理解していた。 「うひょひょひょ。よき柔肌ぢゃった。何事もその柔らかさが大事じゃ」 自分の掌をワキワキさせて言うエロ老師も、やはりゴルドンの師なだけはあった。 エロ老師は、縁側においてあったエロ雑誌を拾うと、屋敷の中に入っていった。