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籠手と手袋、庭掃除

「なんだ、ゴルドン、ニヤニヤして。こえーぞ」 籠手の具合を確かめている、屈強なオークを見て軽薄そうなエルフが言う。 オークにしては整っているとはいえ、ゴルドンの凶相が歪んで微笑んでいる様子は、どこか猛獣が威嚇しているかのような恐ろしさを感じるかもしれない。 もっとも、エルフ、ブロントは本気で恐れて言っているわけではないが。 「いや、学び舎に勤めていた時の事を思い出してな」 「なんだよ。色気のある話か」 エルフが、レザーのグローブの指で頬を掻きながら再度聞く。 「あなた達に、決闘を申し込むわ!!」 士官候補生の女生徒が、手袋を外しながら言う。 明るく美人で、多くの人から好かれる彼女だが、嫉妬されたり、目障りに思われる事も多そうだ。 何かしら、我慢の限界に達する侮辱を受けたらしい。 投げられた白い手袋は、中庭の芝生の上に舞い降りる。 しかし、その投げられた手袋を拾うものが現れない。 決闘を申し込まれた数人の女生徒たちは、本気の決闘と聞いて腰が引けてしまったのだ。 「誰だ。こんなところに手袋を捨てたのは」 その時、巨大な人影が、日の光を遮るように中庭に現れる。 「きょ、教官……」 その姿の威容に、中庭に居並んだ、生徒たちの空気が凍り付く。 「これの持ち主は誰だ。地面に落ちたものは、すべてゴミだと教わらなかったか!!」 板金鎧にサーコートを着込んだオークが、白手袋を拾い上げ。周囲を睨みつける。 「主らか?」 オークの凶相で睨みつけられて、誰もが気圧されるように首を振る。 「わっ・・・・・・」 等の投げつけた女生徒が進み出ようとしたころ。 「おお、失念しておったわ。これは我のものであった」 オークは、凶相をゆがめて微笑むと、手袋の三倍はありそうな巨大な手を、手袋に突っ込もうとする。 当然、オークの強大な手と怪力に、繊細な手袋が耐えられるはずがなく。 バチ!! はじけるような音と共に、手袋は粉々にちぎれてはじけ飛んでしまった。 「む、ゴミが散らばってしまった。ちょうどよい、 諸君が集まっていることだ。これより中庭の清掃を開始する!!」 無し崩し的に中庭の清掃が始まった。 もともと、士官学校の中庭だ。そんなに、ごみなど落ちているわけがない。 手袋を投げつけた女生徒に、謝罪する女生徒たちを見届けてから、オークの教官は清掃の終了を告げた。 「なんだそりゃ。色気もへったくれもねーな」 ブロントは、呆れて皮手袋で鼻の上をこすった。

さかいきしお

コメント (2)

binbin yea
2023/11/05 07:40

さかいきしお

2023/11/05 14:14

bonkotu3
2023/10/29 14:31

さかいきしお

2023/10/29 16:20

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