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蒸気の香りと黒天使

「わーお、ここが文化の最先端!!アキバのオタクショップですか!!」 金髪娘の感極まった声に、店内にいた、みんな同じような格好をした男たちが一斉に振り向く。 が、すぐさま慌てて目をそらす。 非常に訓練された特殊部隊のように整然とした、一糸乱れぬ動きだった。 ガイジンの美少女、ただし、やけに着なじんでいる軍服と、体の線があらわな黒いワンピースを着ている、などという生物は、この店に生息する染色体XYの生物は絶対にかかわってはいけない存在だ。 「あんまり、大声出すと、みんなびっくりするよ。かわいそうだよ」 その隣にいる女性は特に物怖じするようすはない。 少しふっくらした、化粧っ気のない素朴なファッションの若い女性。黒髪からのぞく顔は存外に整っている。 ちらちら見られている。 この店のXY生物は、こちらの方が好みらしい。 「Sorry,御宅(ミタケ)さん。私初めてだし、日本人で普通の知り合い、ミタケさんしかいないから」 普通?どうやら、以前なにかで知り合った同年代の女性に買い物の案内を頼んだ、ということらしい。 何の買い物か。二人は談笑しながら、なにやら衣装が並んでいる、どうも日常で着るような服じゃなさそうな品が並んでいるコーナーに歩いていく。 「ブロン子ちゃん、何着ても似合いそうだけど。モチーフは何かな?」 ブロン子!?そこでまた、金髪少女に視線が集まる。 「えっ、モチーフ。その場にあった服装?うーん」 そこで金髪ポニーテールは腕組して考える。 「蒸気機関車見に行くのかな?」 あいまいな回答に、オタク娘も首をかしげながら 「スチームパンク、ってことかしら。あまりメジャーじゃないけど、一応需要はあるから」 と言いつつ、自分もコスプレ衣装をえらんでいる。 「あれ、それって、アカギさん?」 「あら、知っているのね」 二人は仲よさげに買い物をつづけた。 翌日 「遅い、ブロント少尉、私用とはいえ、五分前行動は基ほ……」 言動とは似合わさない、ただし容姿にはよく似合った、サマードレスを着た2等軍曹が振り返って叫ぼうとして、固まった。 「なっ、なんですか。その格好は!!」 「わたし、知ってます。郷に入っては郷に従えと聞きました。  今から行く所、周りに合わせた方が良いですね。  知り合いに服を見立ててもらったのです」   (だっ、だめだ、この娘) 富士見二等軍曹は、世話役としての責務に限界を感じ、頭を抱えるのだった。 日本の戦跡紹介をかねて、視察という名の観光をしているわけだが。 閑静な神社の一角に保存されている蒸気機関車。 他の面々共々、案内人の解説を聞き入っているわけだが。 金髪ポニーテールでけったいなコスプレをした、外人娘は目立ちまくりだ。 「この蒸気機関車は、先の大戦のときに、東南アジアに送られて現地で敷設された鉄道で使用されました。」 「へえ、私たちのベースの辺りかしら」 ふんふんうなずきながら、まじめに聞いている金髪娘 「終戦後、数々の人々に支援されて、日本へと奇跡の帰還を果たしたのです その後、当時の国鉄に復帰して、実際に使用され、 観光用のSL列車を曳いたりしていました 兄弟機は、子供向けのキャラクターとタイアップして、子供たちの人気者として運転していたのですよ そちらは、まだ、整備すれば動かせるそうです どのSLも、それぞれとても大事にされているのですよ」 「すごいわね。やっぱり日本はオタク文化の中心ね。スチームパンクも健在なんだ!!」 1人、納得気にうなずく金髪娘 (それは違う!!) 富士見2曹ほか、案内人や、周りの観客の心が一つになった瞬間だった。

さかいきしお

コメント (2)

ゆっ
2023/09/05 07:47

さかいきしお

2023/09/05 07:52

知愛

外人こわい外人こわい外人こわい

2023/09/05 05:33

さかいきしお

2023/09/05 07:52

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