成り行きで付き合った”友達以上恋人未満”の彼女との休日デート
休日の映画館は、ポップコーンの香りがほのかに漂う。 ポップコーンとコーラを手にする高校二年生の晴馬と隣のクラスの麗は、期待に胸を膨らませて席に着いた。 今日はネットで話題の青春コメディ映画を観に来たのだ。 予告編ではキラキラした恋愛と笑いが満載で、映画上前から、これなら気軽に楽しめるかもねと笑い合っていた。 ついに映画が始まり、スクリーンには青春の輝きが映し出される。 晴馬は、麗の横顔をチラリと見てドキッとした。部活帰りに偶然会って、勢いで一緒に来たものの、彼女とこうして過ごすのは初めてだったからだ。 麗も、ポップコーンをつまみながら、時折晴馬と目が合うたびに小さく微笑んでいる。だが、中盤に差し掛かった瞬間、物語は予想外の方向へ。突然、主人公たちが情熱的なキスシーンに突入し、しかもその描写は高校生の想像を超えるほど生々しかった。 スクリーンに映る濃厚なシーン。晴馬はゴクリと唾を飲み、麗はポップコーンの手を止めたのだ。 暗闇の中で二人の頬がみるみる紅潮していく。 「…え、こんな映画だったっけ?」 晴馬が小さな声で呟くと、麗は予告と全然違うと小声で返答してきたのだ。 気まずさを誤魔化そうと、晴馬はコーラを一気に飲み干すが、ストローの音がやけに大きく響き、余計に気まずい空気が流れた。 麗はというとバッグをギュッと握り、スクリーンから目を逸らす。 その問題のシーンがようやく終わると、二人は同時に安堵の息をついた。 「……次は、ちゃんとレビュー確認しようね」 ――と麗が小声で苦笑いすると、晴馬も同様に頷く。 気まずさは残ったが、その後は映画の笑える場面で少しずつ緊張が解けてきた。エンドロールが流れる頃には、二人は顔を見合わせてクスクス小さく笑っていたのだ。 映画館を出ると、夕暮れの空が広がっていたのである。 「次はホラーにしようか。そっちのが気楽かもな」 「え、でも私、怖いの苦手なんだけど」 麗が笑いながら抗議してくる。 その帰り道、一緒に会話する中で、二人の距離は、ほんの少し縮まった気がした。