俺と、彼女との放課後の白熱戦 俺の異能力でお前に勝つ!!
夕陽が教室の窓をオレンジに染める放課後。 机を寄せた片隅で、武流はボードゲームの盤を前に、鋭い目つきで駒を握っていた。 対戦相手は、クラスメイトの彩音。ツインテールがピンと跳ね、気の強そうな瞳がキラリと光る。彼女は腕を組み、ニヤリと笑う。 「ふん、武流! 今日こそアンタの連勝記録をぶっ潰してやるから!」 「へえ、彩音もずいぶん自信満々だな。でも、俺の『予測の異能力』には勝てないよ」 武流の異能力――「刹那の予見」。数秒先の相手の行動をぼんやり予感できる力だ。 ボードゲームでは、相手の戦略を一瞬だけ読めるチート級の能力。ただし、一ゲームにつき一度しか使えず、効果はほんの一瞬。それでも、武流はこの能力で校内のボードゲーム対戦で無敗を誇っていた。 「チッ、能力頼りのヤツなんて、私の頭脳で叩き潰すわ! さあ、始めましょう!」 彩音が勢いよく駒を配置。ゲームは、ファンタジー世界を舞台にした戦略バトル。プレイヤーは騎士や魔法使いの駒を動かし、相手の王を倒すのが目的だ。彩音は攻撃的な「炎の軍団」を選び、武流は守備重視の「鉄壁の騎士団」を選択。盤上は、まるで本物の戦場だ。 「ほら、武流! ビビってないでさっさと動かしたら」 彩音の魔法使いが炎の魔法を放つように、盤の中央に駒を進める。武流は冷静に騎士を動かし、防御陣を固める。彩音の攻撃は派手だが、隙が多い武流は彼女の次の手を読みながら、じわじわと優位を築いていく。 「遅いよ、武流! その騎士、置物なの!?」 「う、うるさいな、彩音。焦ってるのはお前の方だろ?」 実際、武流は余裕だった。彩音の戦略は直感的で、攻撃に偏りがち。武流は彼女の動きを予測し、騎士団を効率よく配置。彩音の魔法使いが突出した瞬間、武流の弓兵がそれを牽制。盤上の戦況は、武流に傾きつつあった。 「な、なんで当たらないのよッ!」 彩音がツインテールを揺らし、悔しそうに唸る。彼女の炎の軍団は、武流の鉄壁の防御に阻まれ、ジリ貧だ。勝利を確信した武流は、ニヤリと笑う。 「そろそろ終わりのようだな、彩音」 武流は「刹那の予見」を発動。彩音の次の手――魔法使いをさらに前進させ、強引に突破を狙う――が頭に浮かぶ。武流は即座に騎士を動かし、魔法使いを包囲するトラップを仕掛ける。彩音の駒が動いた瞬間、武流の騎士が一気に攻め込む! 「なっ!? なんで読まれたの!?」 彩音が目を丸くする。武流の騎士団が彩音の王を追い詰め、勝利は目前。だが、その時、彩音の唇に不敵な笑みが浮かんだ。 「武流、能力使ったね? なら、こっちのターンよ!」 彩音が叫ぶと同時に、彼女は隠していた伏兵――「闇の盗賊」駒を動かす。これは、武流がまったく予測していなかった奇襲だ! 盗賊が一気に武流の後衛に飛び込み、王の背後を突く。武流の鉄壁の陣形が、初めて揺らぐ。 「ま、マジか!? いつそんな駒を!?」 「ふっ、能力に頼りすぎなのよ、武流! 私は最初からこの一手を狙ってたの!」 彩音のツインテールが勝利を確信したように跳ねる。彼女の盗賊が武流の王を追い詰め、形勢は逆転。武流は焦りながら駒を動かすが、彩音の計算し尽くされた戦略に翻弄される。能力を使い切った武流に、もはや逆転の目はなかった。 「チェックメイトよ!」 彩音が叫ぶ。盤上の王が倒れ、ゲーム終了。教室に彩音の勝利の笑い声が響く。 「やった! ほら、武流! 私の勝ち! 無敗の伝説、終了~!」 「くっそ……彩花、やってくれるな……」 武流は悔しそうに盤を見つめる。だが、内心では彩音の戦略に舌を巻いていた。能力なしでここまで戦えるなんて、こいつ、ほんとスゲェよ。 「ふん、能力なんてなくても、私の頭脳があれば十分よ! さ、負けた罰として、ジュース奢ってよね!」 彩音がツインテールを揺らし、勝ち誇った笑顔を向ける。武流は苦笑いしながら立ち上がり、財布を手に取る。 「はいはい、わかったよ。でも、次は絶対リベンジするからな!」 「受けて立つわ! いつでもかかって来なさいよね!」 夕陽が二人の背中を照らす。教室には、盤上の戦いの熱気と、どこか楽しげな空気が残っていた。