タコ火星人がやってきた!? ~忘却の夜を添えて~
ハルカは布団に寝転がりながら、スマホの画面よりも星空を眺めるほうが楽しいと思っていた。いつものようにわがままにテレビは消してカーテンも開け放ち、自室を小さな天文台にしてしまう。そんな彼女は洗濯物用の小さなベランダに身を乗り出し、夜空に向かって「あー! 星さまおやすみー!」と大声で叫ぶ。そしてそのまま、自室に戻って毛布を頭までかぶると、「よし、今度こそ寝るか」と目を閉じた。 その瞬間、何かが窓の外を横切ったような気がして顔を上げる。見ると、窓ガラスがうっすらと光り始めていた。まるで向こう側でライトを当てられているように、ボワッと虹色の輪郭が浮かび上がる。しばらく目を凝らすと、あろうことか小さな飛行物体がほんの数メートル先の空中に浮いているではないか。 「ちょ、ちょっと…なにアレ? UFO!?」 今さらながらハルカは飛び起きる。慌てて窓を閉めようとするが、まるで見透かしたようにガラス戸が自動で開き、中からタコのようなフォルムのなにかが侵入してきた。頭部には緑色の光が脈打ち、足が八本どころか十数本にも見える。しかも一見ぬめぬめしているが、どこか毛羽立っているようにも感じられた。 「えっ…なに、このモコモコタコ?」 そんな呑気な言葉を漏らすハルカの前で、その火星人らしき生物は「フシュルル…」というかすれた声のような音を発する。そして器用に足の先を伸ばし、パタパタとハルカの肩を叩いたり、頬を撫でたりしてくる。驚きと好奇心が入り混じり、思わず後ずさりする彼女の足に絡みつき、「この部屋は安全か?」とでも言わんばかりにきょろきょろ室内を見回す。 「やめてよ、変なとこさわんないで!」 ハルカは布団を掴んで丸め込もうとするが、その生き物は器用に触手をくるくる動かし、彼女から布団を奪い取ってしまう。まるで悪戯好きな子どもとじゃれ合っているような光景だった。ずいぶんとフレンドリーというか、なんというか…。そこでハルカは軽くムッとしつつも、「冗談、顔だけにしろよ」と口走って、突っ込むのか照れるのか微妙な表情を浮かべる。 パニック状態のハルカは、ポンと頭を叩いて「冗談、顔だけにしろよ!」と半泣きになりながら自分に突っ込む