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「火の揺らめきは心の揺らめき」
エルフの戦士、ルミエールは、彼の好きな男子エイリオットがクラスの人気者リアナに夢中だという事実を、同じくクラスメイトの小耳から偶然聞いてしまった。 「リアナって、何であんなにモテるんだろう?」と、ルミエールは教室の隅で膝を抱えてつぶやく。 その様子を見た幼馴染のドワーフ、ボルグが近づいてきた。 「おい、また悩みか?」 「ねえ、ボルグ、呪いってどうやるのかな?」 「さー、ドクロとか蝋燭とか使うんじゃない?」 「なるほどね、ドクロと蝋燭ね!」 「て言うか何すんだよ?」ボルグがやれやれと肩をすくめる。 ルミエールは拳を握りしめ、「リアナを呪い殺す!」と力強く宣言する。 「やめろよ、そんなこと!人を呪わば穴二つだぞ!」 「どういう意味?」 「知らんけど。」 その夜、ルミエールはボルグを強引に巻き込んで呪術の儀式を決行した。部屋の真ん中に置かれた蝋燭が怪しげに揺れ、二人の影を歪ませる。 「さあ、始めるよ!呪文は私が考えたから!」 「そんな適当でいいのかよ…」 ルミエールが呪文を唱え始めると、突然蝋燭の炎が青く燃え上がった。次の瞬間、部屋中に白い煙が充満し、ルミエールの身体がビクンと震えた。 「うわっ、何か来た!」 「お前だよ!自分に呪いがかかったんだ!」 鏡を見ると、ルミエールの額には角が生えていた。 「これどういうこと!?」 ボルグは笑いながら肩をすくめる。「だから言っただろ?人を呪わば穴二つってな。」 ルミエールは険しい顔で返す。「そうね、『善因善果、悪因悪果』…ってところね。」 「急に難しいこと言うな!」とボルグが突っ込むが、ルミエールは気にせず再び鏡を見つめる。 翌日、呪いの角が額に生えたまま登校したルミエールは、エイリオットとリアナが仲良さそうに話している様子を目撃し、がっくりと膝をついた。 「結局、私なんて何にも変えられないんだ…」 その姿を見てボルグが言う。 「まあまあ、お前には俺がいるじゃないか。」 ルミエールは目を細めてボルグを見上げた。 「は?冗談、顔だけにしろよ。」 「せっかく慰めたのに!」 ルミエールは笑いながら肩をすくめ、「まあ、呪いもリスクは同じだね。恋と一緒だな。」と口癖を呟いた。 夜風に揺れる木々の葉音が、まるで大地の呼吸のように静かに響く。その中にぽつりぽつりと灯る蝋燭の火は、星空に浮かぶ灯台のようであった。 空は漆黒のベルベットに銀の糸を散りばめたような深遠さを湛え、雲はその布に浮かぶ幻想の島のように漂う。 微かな炎の揺らぎは、ルミエールの心の揺らぎを映し出しているようだった。それは、彼女の中でくすぶる後悔や希望、そしてほんの少しの微笑みを包み込む、穏やかな光であった。 「ねぇ、ボルグ…火って消えたら何になると思う?」 「知らんけど…また次の火を灯せばいいんじゃないか?」 星空の下、二人の影は静かに夜の帳に溶けていった。