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「天空に舞い降りたる、堕天の君と気まぐれのエルフ」

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2024年09月07日 15時04分
参加お題:

高空を駆け抜ける風が、一瞬の静寂を告げたその時だった。どこからともなく、眩い光が降り注ぎ、そして――。 「親方!空から女の子が!」 エルフの戦士、ルミエールは指を差しながら叫んだ。彼女の言葉に、親方は面倒くさそうに顔を上げた。 「そうか、もう上がって休め。」 ルミエールは少しばかり不満そうに頷くと、地面に降り立ったばかりのその少女を見つめた。純白の羽根を持つその姿は、まさに天使そのものであった。 「これは何かのチャンスだよ…恋と一緒だな。」ルミエールは自分に言い聞かせるように呟いた。 彼女は天使を抱きかかえると、自宅に連れて帰ろうとした。しかし、その瞬間、背後から声が響いた。 「おい、ルミエール!その子を連れて行って何をするつもりだ。」 それは、彼女の相棒であるドワーフのガルドルだった。彼は腕を組みながら鋭い目でルミエールを睨んでいる。 「ギク!」 ルミエールは一瞬固まったが、すぐに無邪気な笑顔を浮かべた。 「なに言ってんのよ、ガルドル。ただ助けてあげようと思っただけだってば。」 「冗談、顔だけにしろよ。」ガルドルは呆れたようにため息をついた。 ルミエールは笑いながら肩をすくめ、天使を引き寄せる。 「でも、この子、明らかに迷ってるでしょ?放っておけないよ。」 「だからって、自宅に連れて帰る理由にはならんぞ。」ガルドルはさらに詰め寄る。 「でもね、ガルドル。家に連れて帰って、ゆっくり話を聞いてあげるのが一番だよ。恋と一緒だな。」 ガルドルはその言葉に目を細めた。 「お前の恋愛観は本当に歪んでるな。第一、何の下心もないって言い張るなら、顔に出さないようにしろ。」 ルミエールは苦笑し、天使を抱きかかえたままガルドルに向き直った。 「まあ、何事も経験だって。ほら、ガルドルも一緒に来てよ。みんなでお茶でもしようよ。」 ガルドルは一瞬躊躇したが、やれやれと肩をすくめた。「まあ、お前一人で何かやらかすよりは、俺がついていった方が安全だろうな。」 そのまま、ルミエールとガルドル、そして天使は一緒にルミエールの家へ向かうことになった。 その夜、空には無数の星々が煌めき、夜風が静かに木々を揺らしていた。ルミエールの家の小さな窓から漏れる灯りは、まるで一つの星のように、静かに闇を照らしている。 天使は小さな笑顔を浮かべ、穏やかな眠りに落ちていた。ルミエールはその姿を見つめながら、柔らかく毛布を掛け直す。 遠くでガルドルが、不機嫌そうに鼻を鳴らす音が聞こえた。 だが、ルミエールはその音にも構わず、ただ一言だけ呟いた。 「…これが、あの子のためになるなら。」 やがて、夜が深まるにつれて、風の音も次第に静かになり、星々の輝きが一層増していった。その中で、ルミエールは天使と共に、静かに眠りについた。 彼女の窓から見える空には、まるで遠い記憶を思い起こさせるかのように、雲が薄くたなびき、その隙間から無数の星々が瞬く。夜風は軽やかに木々を揺らし、大地に生命の息吹をもたらすかのように、優しく囁いている。空は無限に広がり、地平線の彼方へと続く旅路を示しているかのように、静かにその存在を示していた。

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