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義母と買い物に行く(後編)
【性懲りもなく後編です】 「ふーん。まぁそれは置いといて。で、どうよ。この3つが最終候補だけど、貴彦君としてはどれがいい?」 ハンガーに吊るされた下着は3種類で、どれも素人の自分が見てもきめ細かい刺繡がされ、上品な感じがした。 そして、商品に付いている値札の金額に衝撃を受ける。 2枚で1,000円程度の安売りボクサーパンツしか穿かない自分にとっては別世界のようだった。 これ等を義母が着たらどうなんだろうと頭の中で想像していると、危うく下半身が反応しそうになる。 さすがに照れくさくなり、あまりまじまじと下着を見ないようにしながらも、サンプルとまだ困り顔をしている義母さんを目配せしながら、あまり普段馴染みのない色だけどこれは良いなと感じた、紫色の下着を指さした。 「これ・・・ですかね?」 「おお、これね。いやー貴彦君もお目が高い。基本、白とか黒ってのは、ある意味着る人を選ばないんだけど、この紫ってのはね、案外似合うのは難しいんだよ。まぁ桃ちゃんのプロポーションなら着こなせるかな。 さすが貴彦君。お母さんの事良く解ってるね」 返答に困る解説をする亜希子さんが妙に張り切りだす。 「待てよ、これならオプションで合せやすいガーターとストッキングがあったな・・・桃ちゃん、安心し。安くしときまっせ。 ところで貴彦君はガーターベルト好きかい?いや違う。ガーターベルトを着るお母さんは好きかい?」 「もう用が済んだなら戻りますよ!」 これ以上はもう付き合ってられんとばかりに、フィッティングルームから退散した。 隣の部屋に戻ると、同年代二人の、お疲れ様でしたと言わんばかりの視線がこちらに向けられていた。 買い物も無事に終わり、義母が会計中に車を店の前に着けると、お店の3人が店の外に見送りに来てくれた。 「じゃあね、貴彦さん。また来てね」 「由佳ちゃん、また美味しい珈琲お願いするよ。隆一さん、今度良い道があったら教えてください。ツーリングコース増やしたいんで」 「ははは、バイクかい?気を付けなよ。今度また由佳ちゃんと聖地巡礼ドライブに行くから、色々通ってみるよ」 「頼んます。じゃあ」 店を後にしようとしたら、亜希子さんがこっちこっちと手招きする。 「またなんですか?」 「さっきは茶化して悪かったね。ただ、これは改めて言っておきたいんだけど、アンタが桃ちゃんとそういう関係になったってことは、アンタにとって、母親代わりや後見人じゃなくなったってことだからね。それは良く解ってるわよね?」 「・・・・良く解ってます」 「アンタ達以外の大多数の人から何か言われたり、後ろ指を指されるかもしれない。もっとも、アタシ達は勿論味方だよ。 でも、あの子の最大の味方は貴彦、アンタなんだからね。しっかり守ってやるんだよ」 「はい」 「アンタ達が身内の不幸とかでどれだけ悲しい、ツラい思いをしたかってのは想像が付くしね。だから、残されたアンタ達二人が幸せになる権利は十分あるんだよ。桃子ちゃんは本当にいい子だよ。アンタの出来る範囲で幸せにしてあげな。アタシ達も色々助けになるから」 「解りました。ありがとうございます。」 「まぁ、あとは今日買った下着の使用レポもお願いね。夜が盛り上がる事は保証したげる。ふふふ」 「・・・それは勘弁してください」 オチを忘れない亜希子さんだった。 3人が店の前で見送る中、車を発進させる。 積み込まれた買い物の紙袋が、想像を超えた量で積まれている。 「こんなに買ったの?」 「亜希子さんが、なんか今日はめでたい日だ。って言って、売り物にならないとか、アンタしか着れないからもうあげるって、おまけもいっぱいくれたの。 あと買い付け行った時のお土産ももらっちゃった。なんかお香とかお肌に良いローションとか」 「在庫一掃セールじゃないんだから・・・」 少し会話が途切れ沈黙が続いたあと、義母が切り出した。 「・・・ねえ、さっき亜希子さんになんて言われたの?」 どう答えればいいのか困って無言でいると 「・・・教えてくれないと、今日買った下着、もう見せません」 と、義母は可愛らしい拗ねた声で言った。 「・・・桃子さん・・義母さんを、しっかり守って、幸せにしてあげな。だって」 「・・・もう、亜希子さんたら・・・」 義母が少し顔を赤くして俯く。 「ねえ・・・」義母がもじもじしながら話す。 「ホテル、寄らない?今日のお買い物、早く着てみたい・・・」 頭の中のカーナビがホテルの最短ルートを瞬時に導き出し、いつも直進する交差点を右に曲がった。 ・ ・ ・ 「いやー今日は良い日だったね。もう早いけど店閉めちゃってみんなで肉食いに行こう。由佳、焼肉黒助予約しといて」 「やった。あそこの冷麺大好き。3人で予約しとくね」 「今日の叔母さん、すごく機嫌がいいね」 「お兄ちゃん、あの二人見て分からなかった?」 「貴彦君と桃子さん?・・・ああ、そういうことか・・・」 「一回り年上の人が恋人の先輩として、そっちの方もアドバイスしてあげないとね。まぁお兄ちゃんにはあたしもいるんだけど」 「由佳ちゃん、怖いこと言わないで・・・」 「アンタ達、早く支度しなさい。隆一、今夜は良い肉しか頼まないから、たんまり食って栄養取っときなさい。今夜は皆で盛り上がるわよ」 「了解しました・・・」 「お兄ちゃん、私の相手も忘れないでね」 【続く?】