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ももずきん
「おい、魔物食い、はらぺこ熊、御指名だぞ」 冒険者の店で暇そうにしていた二人に、店主が声をかける。 いや、プーにゃんは熱心にはちみつ入りのタルトを品定めしていたが。 「えーと。なになに、桃頭巾?なにそれ」 「モモ?プーにゃん桃大好きクマ!!」 食いつきが違う二人がそばに来ると店主が説明する。 「賢者の学園からの依頼だよ。子供達に劇をするんだと。 チェルキー、あんたも確か学園にはいたんじゃないか」 「あ~、そういえばそんなのもあったっけ」 そう、実はチェルキーは頭はいまいちとされるドワーフにしては珍しく、賢者の学院で修行したことがある。 もっとも初等科を卒業したレベルでしかないが。 美食の探求には、知識も不可欠だ。 「それでよ、その演目が、桃色の頭巾をかぶった小柄な戦士が、オーガーを倒すっていうんだよ。 そいつは、でっかいトマホークをもって、クマをお供にしているらしい」 そこで、店主はちらりとプーにゃんも見る。 「あんたらに、ピッタリだと思うが。今、仕事ないんだろ」 「仕方ないね~」 「モモ、美味しいくま?」 『まさかりかついだ ももずきん くまにまたがり おにたいじ』 大きなクマが、背中の上に桃色のマントを被った少女を乗せて、のそのそ歩いている。 みるからにやる気がなさそうだ。 「おうおう!!動物たち!!わが家来になるならば、この美味しい桃をやろう!!」 「クマ!?モモ!!食べるクマ!!」 ポン!!と少女の姿に戻ったプーにゃん。 「あっ、こら!!全部食べちゃダメ!!」