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意識の狭間と塹壕と
市街戦が行われている最前線 ビルの隙間につられた待避壕にブロント少尉はいた。 身をかがめながら、がれきの隙間に滑り込み、側溝を這い進み。 将校偵察を買って出て、聴音壕、最前線のさらに突出した位置まで前進したのだが。 やけに静まり返っている。 (いけないわ) 敵側は、すぐにでも強襲を始めそうな気配だった。 (あなたは中隊司令部に戻って報告を) そばにいた部下に向かって指示を出す。 (少尉は?) 声を出すこともできないので、ハンドシグナルだ。 (私は残って監視を続けます) …… (幸運を!!) 部下は、一瞬躊躇した様子だが、頷くと、静かに素早く後退していく。 (応援が来るまで、間に合いそうもないわね) 少尉は、ライフルを構え、その時を待った。 「少尉?いつまで寝ている……」 ドアをあけてシルビア伍長がのぞき込むと……。 「……、増援を……、私が殿を……」 「少尉!!起きて!!」 悪夢に魘されているブロント少尉は目を覚まさない 「……、大丈夫……、残りま……」 「アンジェラ!!起きなさい!!」 シルビア伍長は、大声でブロント少尉を揺り起こした。 「はっ、あっ、あれ。伍長……、夢……?」 「休みだからって気を抜きすぎですよ」 (無理もないかしら。優秀だといっても、私より年下なんだから)