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ガトーショコラの苦い味

「はあ、つまんないな~。 隊長はこの頃いつもどっか行っているし。 訓練ばっかりで、いつもあのちびっこ軍曹にやられるし」 金髪をポニーテールにした少女、に見える年若いブロント少尉が、 チョコレートケーキ、ガトーショコラを前にぼやいている。 なぜか、ここの基地の酒保はスイーツが充実している。 比較的、女性隊員、女性兵士が多いからだ。 と、そこに、くだんのちびっこ軍曹がやってくる。 独り言を聞かれたかと思い、身を固くするブロント少尉だが……。 「少尉、中隊長、大尉は家族の墓参に行っています。 少尉もいかれますか?あまり時間はないですが」 富士見2等軍曹が、いつもの鉄面皮で言う。 欧米人から見ると、かなり幼げに見える容貌と、髪型が相まって、 まるで日本の木彫り人形、こけし、を思わせる その顔をみた少尉の目つきがすっと変わる 『すぐにいくわ。場所は?』 英語だった 『こちらですが、行かれますか』 2等軍曹が差し出そうとしたメモをひったくると、少尉は手つかずのガトーショコラをそのままに、食堂を出て行った。 (見透かされましたか……。まさに天才ね) 小さな声でつぶやいた2等軍曹だったが、 『軍曹、危ない橋を渡りましたね』 いつの間にか、すっと寄ってきていた銀髪の伍長が声をかける。 『良いのですか、貴女の役割から逸脱していますよ』 『ふふ、いつも天才少女の尻拭いをさせられるのです。このぐらいは当然ですよ』 富士見2等軍曹は、伍長の存在に驚くでもなく、軽く笑って返す。 『あなた、ただの二等軍曹じゃないわね』 『……、伍長、貴女はずいぶんとお化粧がうまいですね。  私にも教えていただきたいわ。ハリウッド仕込みですか。  いえ、東海岸のほうの間違いでしたか』 『ちっ!!』 2等軍曹の物言いに、銀髪の伍長は一瞬気色ばむが、テーブルに座りなおす。 『私は、ブロント少尉と”同じぐらい”の年ですよ。化粧は必要ないわ』 2等軍曹は、わずかに頷いて、伍長の目の前に座る。 『必要な役割というのはありますよ。 貴女の国では、軍曹が平気で士官を殴るものですか』 富士見軍曹な何かにつけて金髪で年下の少尉を直して差し上げている。 だが、普通はそこまでは……。 銀髪の伍長はかすかに首を振った。 『……、私は少尉の護衛よ。あなたの役割とも違うわ』 そこでシルビア伍長は立ち上がった。 『では、私は自分の役割を果たしに行きましょうかね。中尉殿』 最後はなぜか、富士見軍曹に向かって言った 富士見2等軍曹は、聞こえなかったかのように、何も答えなかった

さかいきしお

コメント (2)

銀の野兎
2023年09月23日 23時01分

さかいきしお

2023年09月24日 08時30分

seahopper7388
2023年09月21日 05時23分

さかいきしお

2023年09月21日 05時43分

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