ただいま、ふるさと。/スマホ壁紙アーカイブ
遠回りばかりして、大人になった。 あの日飛び出したこの町は、小さくて、眩しくて、窮屈で、でも本当は誰よりも私を待ってくれていた場所だった。 夕陽が沈む路地裏、風に揺れる電線、どこかから漂う晩ごはんの匂い。 変わらない景色の中で、ひとつだけ変わったのは私の心。 夕陽に向かって私はそっと声にする。 ただいま──。 手に持つバッグの重さよりも、胸の奥の懐かしさの方がずっと重い。 幼い頃友達と走り回ったこの道も、初めて恋をした日に見上げた夕陽も、今は優しく彼女を迎えてくれる。 海に沈む太陽が最後の一筋まで彼女の影を伸ばしながら、おかえり、とささやいてくれた。