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作られし静寂
「今日は、他系統の魔法について学習します」 鞭をフリフリ、シルビア先生、相変わらず教師と言うのが信じられない容姿だ。 「そこで、他系統の魔法、特に精霊魔法について学習するのですが・・・・・・」 「なんだ、シルビア先生、そのいやそうな顔は?」 なぜか一年生のマントを羽織ったダークエルフは隣で、心外そうな顔で答える 「やむを得ません、他にすぐに手配できる精霊魔法の習熟者がいなかったのですから アーゼリン生徒が助手を務めます」 背に腹を変えられないといった顔でシルビアがあきらめたようにつぶやく。 「誰かひとり、前に出てアーゼリン生徒に魔法をかけてもらいなさい」 「へへへ、俺は精霊魔法なんかにかかんないぜ」 自信過剰な様子の長身の男子生徒が進み出る。 たしかどこかの有力貴族の出だったはずだ。 しかし、その実力は。 (鼻っ柱を折るにはいい機会かもね) 「ふふふ、少年、いい度胸だな。びっくりするぞ」 不敵に笑うアーゼリン 『静寂の帳よ、今こそ降り立ち、音の全てを包み込め! 響きは影と化し、言葉も風も消え失せよ―― 《サイレンス》!』 アーゼリンの詠唱を聞いたシルビア、何の魔法か察しがついて止めようとしたがもう遅い 周りからすべての音が消え失せた。 (こっ、これじゃあ授業にならないじゃない) (たっ、たしかにびっくりした) 「どうだ?すごいだろう?」 静寂の中、アーゼリンの低く張りのある声だけが響き渡った。