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エルフ界の制服(短ランと長ランぽい)
「制服の裸族とボタンの行方~あるエルフの制服論考~」 朝の風が軽やかに通りを吹き抜け、エルフのユニスとドワーフのバルゴスが、村の外に設置された簡易ステージに立っていた。通りを歩く人々がちらほらと足を止め、二人のやり取りを見守る。彼らは何をしているのかと不思議そうな表情を浮かべながらも、少し興味が湧いたようだ。 「はいどうも~、エルフと!」 ユニスが明るく元気に手を挙げ、声を張る。彼女のエネルギッシュな挨拶に、広場にいる数人がクスクスと笑い、ステージ前で立ち止まった。バルゴスはため息をつき、片眉を上げながら相棒に合わせる。 「……ドワーフです。」 ステージ前に集まった観客たちは、何か面白いことが始まるのではと期待し、二人をじっと見つめる。ユニスは観客の反応を見て嬉しそうに手を腰に当て、さらに声を張り上げた。 「今日のテーマは制服!みんな制服の思い出とかある?」 数人の観客が顔を見合わせ、戸惑いながらも笑っている。ステージ上のバルゴスは腕を組んで少し考え込むような仕草を見せた。 「俺が学生の頃は短ランが流行っていたんだ。」 「不良だったんですか?」と、ユニスが即座に興味津々な表情で返す。数人の観客がクスクスと笑い声をあげる。 バルゴスは軽く肩をすくめながら答える。「いや、優等生だったよ。だけどな、短ランはオシャレだって吹聴があっただよ。」 ユニスは首をかしげ、疑問を浮かべる。「風潮じゃなくって?」 「そう、風潮じゃなくて吹聴だ。短ランは長ランよりカッコイイとか、流行の最先端だとかって、誰かが言いふらしてたんだ。」 「ふーん、そうなんだ。」ユニスは納得したようなしないような顔をするが、バルゴスは気にせず続けた。 「今思えば……クラスメイトがパンツ一丁で先生とボンタンを引っ張り合ってたのを思い出すよ。結局職員室までそのまま引っ張って行かれてな。稲葉君、元気かな。」 その場の観客が一斉に笑い出す。ユニスも顔を覆って笑いながら、バルゴスにツッコミを入れた。 「パンツ一丁でボンタン!?それ、やっぱり不良じゃないですか!」 ユニスのツッコミに観客も盛り上がり始め、ステージの周りには少しずつ人が集まってくる。ユニスはそれを見計らって、さらなる仕掛けに出た。 「というわけで、私も制服を着てみました!」と突然ポーズを取るユニス。彼女には短ランが羽織られているが、ボタンは全て開けっ放しだ。バルゴスがそれを見て、目を細めた。 「……それ、いわゆる短ランだな。」 「どう?オシャレでしょ!」ユニスは自信満々に胸を張る。 「冗談、顔だけにしろよ。」バルゴスは呆れたように突っ込み、観客の笑いが再び広がる。 「いやいや、恋と一緒だな、自由が大事なんだよ!」 ユニスの口癖に観客は拍手を送り、彼女の自由奔放な発言にますます注目が集まる。バルゴスはそれでも首を横に振り、諦め顔で返した。 「ちょっと待ってね、次は衣装チェンジだよ!」と、何やら鞄から取り出すのは……今度は長ランだ。 「えっ……また制服か?」バルゴスが驚きつつも、冷ややかに突っ込みを入れる。 ユニスはすでに準備万端、長ランをその素肌の上に直接羽織った。 「……やっぱりボタンは閉めないのかよ。」バルゴスは呆れ顔で腕を組む。 ユニスは満面の笑みを浮かべ、彼に向かってウィンクをする。「これはオシャレなんだよ!恋と一緒だな、自由が一番!」 ユニスは客の反応に大満足の様子で、さらにポーズを取る。「どう?長ランってカッコいいでしょ!風になびく感じが最高だよね!」 「いやいや、これはもう制服じゃなくて……ただのファッションショーだろ。」バルゴスがぼやくように言うが、ユニスは全く気にしない。 「そう!これはアートだよ!私のスタイル、恋と一緒で、全て自由なんだ!」 観客はまたも盛り上がり、ユニスはまるでスターのような輝きを放っていた。バルゴスは、ため息をつきながら小さく呟いた。 「ボタンくらい閉めろよ、先生に没収されるぞ。」 「裸族だから没収されても平気だよ!」ユニスは誇らしげに胸を張り、観客もますます笑いをこらえきれなくなる。 「ほんとにこいつは……どうして俺はこんな奴と一緒にいるんだろうな。」バルゴスが小さくつぶやきながら、観客の笑い声が広場に響き渡った。 やがて空は高く、青さを増していく。森の木々が揺れる音が、静かに通りを包み込み、遠くには鳥たちのさえずりが響いていた。風は穏やかに流れ、雲は白く光りながら、青空の中をゆっくりと移動していく。その無限の広がりは、まるで世界全体が永遠に続く旅の途中であるかのように見えた。 自然の息吹がすべてを包み込み、空と大地の間にあるすべてが、ひとつの調和を奏でていた。それは、どこか果てしなく美しいものであり、すべてが静かに動いている。この瞬間は、確かに永遠であるように感じられた。