初夜権 2
その日は朝からお父さんもお母さんもなんだか元気がなくて、妹とふたりで心配してた。なんでもないよって言ってたけど、そんなの嘘に決まってる。 晩ごはんを食べ終わると、妹がお母さんに呼ばれていっしょに2階にいった。お父さんは泣いてた。どうしたのって聞いたけど、何でもないから早く寝なさいって言われた。まだ寝る時間じゃないのに。 妹とお母さんは全然戻ってこなくて、しょうがないから僕は自分の部屋に戻ろうとした。そしたら、お母さんと妹がお母さんの部屋から出てきた。妹はきれいな着物を着ていて、嬉しそうにはしゃいでた。でもお母さんはお父さんと同じで泣いてた。見て見ておにいちゃんって妹が言ったので見たら、なんだか妹が別の人みたいに見えて、お父さんもお母さんも泣いてるし、急に怖くなって僕は慌てて自分の部屋に入った。 しばらくして、誰かが家にやってきた。話し声が聞こえたけど、よく聞こえなかった。でも、お父さんとお母さんがいっしょによろしくお願いしますって言ったのだけ聞こえた。 階段を上がってくる音がして、ドアを開けてみたら、村長さんと、村長さんの息子さん兄弟と、妹がいた。村長さんがしばらくそこでじっとしてなさいって言った。僕はドアを閉めて寝ようとした。けど全然寝れなかった。 布団の上でごろごろしてると、急に大きな妹の声がした。どすどすって床が揺れる音も。何やってるのかわかんないけど、すぐに妹を助けなきゃって思ってドアを開けたら、お父さんがいた。絶対に部屋から出るな、今日はもう寝なさいって言われた。でもって言おうとすると、大丈夫だから、妹は病気にかかってるから村長さんに治してもらってるんだ、明日には治るから、って。お父さんが見たことないくらい怖い顔をしてたから、僕はうんって言ってドアを閉めた。 妹の声はさっきより大きくなって、やめて、とか痛い、って聞こえてきた。ぎゃーっていう叫び声も聞こえた。僕は妹が心配で全然寝れなくて、どうか妹の病気が治りますようにってずっと祈ってた。