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父親たち
「ゴルドン、戻ったのか」 魔法陣のある部屋から出てきたオークの戦士を、オークの女性兵士が出迎える。 女オークといっても、角が生えて体つきがかなり筋肉質なだけで、そこまで人間の女性と違いはない。 ただ、この女性兵士は、屈強に鍛えられた体には違いないが、人間の女性の中に混じっても、美女と言われて差支えがない容姿をしていたが。 「貴様の”はらから”とやらには会ったのか? 女オークの口調には若干の嫉妬が含まれていた。 「……」 オークの戦士は無言でうなずく。 ゴルドンと言われたオークの戦士、こちらもオークの男にしては整った顔をしている。 無骨な人間の男、と言われれば納得するかもしれない。 「ふん、ついてこい。王が待っている」 「わかった、妹よ」 「今戻った。父者、いや……、王よ」 王座に座る、オークの王。こちらはだれがどう見ても、人間と見間違えがない。 オークそのものといった、巨大な体つきで壮年の男性オークが、これまた巨大な王座に腰かけている 「いや、よい。貴様の母の話をきくのだからな。我も父として聞こう」 そういうと、オークの王は立ち上がった。 この親子が会話するのには、言葉はいらないようだった。 二人は、広間の真ん中で四つに組みあった。 そのころ 「シルビアちゃん~ パパを見捨てないで~」 「あ~、うっさい!!」 (お父様、お母様に勝ったっていうけど、本当かしら?)