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フィリアン王女@夫・大公への手紙
彼女はヴィルア王国の王女であるだけでなく、国内最大権門スティクス家の当主*であり、ルロア大公妃である。 フィリアンは奢侈はもちろん、もともと華美なことを好まなかったが、アヴェリンが「あなたは大国ヴィルアの王女にして、その最大門閥の当主、そして陛下と兄上から大公に叙された私の妻なのです」 という夫の言葉に従い、質素すぎない装いを心がけている。 ちなみに、赤い石のティアラは彼女の瞳に、赤い石のティアラはアヴェリンの生まれ育ったアキシミナーを表すもので、婚礼に際して贈った。 大公(夫)の留守中は、残った側近・家臣やスティクスの諸侯と領の統治をする。その報告に、まったく個人的な(=アヴェリンへの)言葉や思いを織り交ぜる。その段になると、うきうきしてしまう。 1〜3枚目:「ルフィオ殿、もうすこしで書き終えますから、ちょっと待ってくださいね」るんるん気分 10枚目:「え…?」 タラントとガブリエレが薄汚れた姿で到着した時に、いやな予感がしていた。 *タラント:側近の中では年長者だが、最側近であるクライブとともにアヴェリンの親衛隊長的な人物で、度々部隊を預けられる指揮官。 *ガブリエレ:クライブが騎士叙任された後にアヴェリンの筆頭従者となった。現在は彼も叙任されて側近のひとり。 タラント「ヴィルアの主力は敗退し、ほぼ総崩れです。アヴェリン様は追撃するロブリシュ軍を迎撃しましたが、衆寡敵せず……」 ガブリエレ「先に攻略した城砦に退却し、敵を抑えております! アヴェリン 様は防衛の名手です。どうかご安心ください」 フィリアン「(#^ω^)ビキビキ」 *スティクス家は女性の継承権を容認しており、フィリアンの母である亡王妃が継承権を保持していた。父王フレリックとの結婚は、そのスティクス家と領地を継承するための政略結婚だったが、王妃存命中にそれは達成できなかった。 スティクス家は諸侯の合議制でルロアを中心とする大領を維持・統治していた。 そこへ、フレリック王の長子、王太子であるリシャール王子が個人的にも将軍としても信頼するアヴェリンと妹フィリアンの結婚を勧める(ふたりの感情も察していた)。 その真意は、妹フィリアンに継承権を行使させスティクス家の当主とし、その保護のために夫アヴェリンに相応の爵位を与え、諸侯を制しようという考えだった。 かくして、当初は夫・代理人としてスティクスの統治・軍事を掌握したアヴェリンだったが、ほどなくしてルロア大公の叙された。