遅い...
彼との話が終わり席を立つ。 正直まともに思考できる状態ではない。 しかし時間もない。 世界の破滅を見届けるか、彼女を殺すか... 普通なら考える余地もないのかもしれない。 たった一人の命で世界がすくえるのだ、答えなんて決まっている。 でも自分にそれをする勇気はない。 そんな自問自答を繰り返し扉を開けると彼女がいた。 私と彼は驚きとともに形容し難い恐怖も覚えていた。 今の話を聞かれていたのではないかと。 一瞬の間を置き私を見つめて彼女は言う 「遅い」 この言葉に一種の安堵を覚えつつ、悩みも吹き飛んだ。 迷うことなんて無い。 魔法という一種の法則に基づく事象ならば、解決策は必ずあるはずだ。 私は魔法が使えないが、生きていくうえで魔法使いに対抗するために身に付けた知識がある。 総動員すれば何とかなるかもしれない。 楽観的かもしれない、でも希望があるなら諦められない。 今持てる勇気と決意を込めて彼女に返す 「待たせてごめん。一緒に行こう」 彼女は私の返答に首を傾げ、これを聞いていた彼は、やれやれと頭を抑えつつも笑顔だった。