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放課後の陽が斜めに差し込む裏路地に、小さな「秘密」が隠されていた。 美咲は、今日もその扉の前に立っていた。校舎の裏にひっそりと開いた古びたドア。誰も気づかない場所。けれど、美咲だけは知っていた。 それは、誰かと交わした約束の場所だったのか、それとも、自分自身との約束だったのか。曖昧なまま、日々は過ぎていった。 「ねぇ、今日も来たの?」 背後から、制服のリボンが風に揺れる音とともに、彼女が現れる。 「うん。……でも、別に誰を待ってるわけじゃないよ。」 照れ隠しのように美咲は笑った。けれどその頬はほんのりと赤い。 午後三時の扉。それは、開かれることのない、けれど誰かを待ち続けるためだけに存在する魔法の扉だった。 そして今日もまた、誰にも知られぬまま、そっと軋む音を立てる。