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彼女は小さな木製のベッドの上にうつ伏せになり、頬を枕に押し付けていた。カーテンの隙間から射し込む柔らかな朝の光が、彼女の髪の毛を淡い金色に輝かせている。しかし、その美しい光景とは裏腹に、彼女の表情はどこか拗ねたように曇っていた。 「またなの?」と、誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。 部屋は静まり返り、唯一の音は窓の外でさえずる小鳥の声だけだった。その静寂は彼女の胸の中の重苦しい気持ちをさらに際立たせているようだった。昨夜の出来事が頭の中をぐるぐると巡り、心の中で幾度も繰り返される。ほんの些細なすれ違いだった。けれど、それが彼女にとっては大きな痛みとなり、眠れない夜を過ごさせるほどのものだった。 彼女はふと枕の上で顔を右に向け、窓の外を見つめた。光のカーテン越しに広がる空の青さが、どこか遠く感じられる。 「どうしてこんなに、うまくいかないんだろう」 そう思うたびに、自分が小さな子供のように感じられ、ますます不満を募らせていた。 だが、そのうち、彼女の耳にふっと小鳥の声が優しく響いた。その単純で、でも力強い生命の音に心が少しだけ揺れた。そして次の瞬間、彼女は自分が何をしているのかに気づいた。 「こんなことでいつまでも…」そう思いながら、彼女はゆっくりと体を起こした。 柔らかな光が顔に当たり、今度は少しだけ暖かく感じられた。深い息をひとつつき、彼女は軽く髪を整える。もしかしたら今日という日は、昨日を少しだけ塗り替えてくれるかもしれない。そんな希望が、ほんのわずか心の中に灯り始めていた。 そして、彼女は立ち上がり、部屋の窓をそっと開けた。新鮮な朝の空気が部屋に流れ込み、彼女の心にもほんの少しの清涼感を運んできた。まだ小さな一歩ではあるが、確かに前へ進むための一歩だった。 彼女は小さく笑みを浮かべた。もう少し頑張れる気がした。