叔母と僕
今年のお盆は、珍しく叔母が来ていた。叔母は普段は海外を飛び回っているらしく、なかなか会う機会がない。お盆に帰省したのも5年振りだと叔母は言っていた。 「たまには帰らないとね……」 皆がリビングで大人の話で騒いでいたので、僕は自分の部屋に戻っていた。すると、叔母が入ってきた。 「賑やかなのが苦手で……ごめんね」 「僕も」 叔母は少し笑うと、床に座った。叔母は美人で、思わず見とれてしまった。お父さんが、叔母はすごくモテたと言っていた。でも、結局誰とも付き合わなかったそうだ。 「叔母さん、久しぶりだね。やっぱり忙しいの?」 「そうだね。それもあるし……」 「?」 「ううん、なんでもない」 叔母はなんだか悲しそうな顔をしていた。なんとなく、理由は訊かない方がいいような気がした。 しばらく僕も叔母も黙っていた。正直に言うと気まずくて、トイレにでも行こうかと思い始めた時。 「本当におにいちゃんそっくりね」 「僕が?」 「うん。なんだか懐かしい気分になってくる……」 昔を思い出しているのだろうか。叔母の表情は相変わらず悲しそうに見えて、僕は何か悪いことをしたような気分になった。もしかして、お父さんと仲が悪かったのだろうか。特にそんな話は聞いたことないけど……。 「ね、ぎゅってしていい?」 叔母の突然の言葉に、僕は心臓が跳ねる音を聞いた。 「え!?」 「大丈夫、変なことはしないから安心して」 そう言うと叔母は僕に近づいてきて、僕を優しく抱きしめた。叔母はやわらかくて、いいにおいがして、僕はドキドキした。 「ミナとは仲良くやってる?」 叔母が耳元でささやく。ミナは2つ下の僕の妹だ。仲が良いのかはわからない。けど、普通に会話もするし、別に喧嘩もしない。 「うん」 「よかった」 叔母の腕が離れる。 「妹を大事にしてあげてね、おにいちゃん」 「うん」 叔母は部屋を出ていった。僕はドキドキしたまま、しばらく窓の外を見つめていた。