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その後、郷土史研究会兼民俗学研究会顧問鈴原佳純の独壇場が始まった。
我が県に室町時代より伝わる狗神伝承・狗神信仰についての講義が僕一人のために展開されていく。 「ちょっと待って佳純先生、つまりその狗神の家系が親友の家だって事?」 「そう、古文書に伝わる狗上一族は代々女系。でもごく稀に男子が誕生することがある」 「ふんふん、それが親友って事ね」 「過去の古文書を読む限り、狗上家の男子は例外なく元服の頃に村に大いなる災いを齎している」 「どんな災いを?」 「細かく史料にあたった限り、どうやらその年頃になると性欲が異常に亢進するみたいね、村中の女と通じようとしたってあるわ。そして村人が女たちを隠すと、村人全てをブチのめしてでも女たちを取り戻そうとする暴力性が前面に出るみたい」 「先生あんがと、なんとなく分かった。それ、もう始まってるから」 「え…」