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【胸糞注意】姉の記録、姉の記憶
『私は今、ご主人様のペットとして幸せに暮らしています』 姉は動画の中でそう言っていた。 姉は9歳の時に【購入】された。当時まだ4歳だった僕には、姉の記憶はおぼろげにしかない。覚えているのは、朗らかで優しい姉だったということ、そしてそんな姉のことが大好きだったということ。 両親からは姉は遠くに行った、とだけ説明された。幼い僕は特に不思議に思うこともなく日々を過ごした。ただ、大好きな姉がいなくなったという寂しさがずっと心に沈殿していた。それでも僕は漠然と、当然のように姉が帰ってくると信じていた。 姉の【購入】に支払われた資金があったからだろう、生活面で不自由したことはなかった。学校にも通わせてもらえた。だが、父親は仕事を辞め酒浸りになり、母親は自らの人生を閉ざした。僕が中学生の頃、父親は身体を壊して病院から出てこられなくなり、僕は家に独りになった。そんな頃に僕は【購入】制度のことを、そして姉の身に起こったことを知った。 それから間もなく、父親のパソコンから動画を発見した。『飼育記録』と題されたその動画は、【購入】されてからの姉の様子が記録されていた。 それは、とても直視できるものではなかった。まだ幼い姉が、もっと幼い男の子によって躾と称した拷問を受けていたのだ。男の子が様々な道具で姉を虐げるたび、姉は悲痛な声で泣き叫んだ。9歳の少女から出ているとは思えないほどの絶叫。姉は首輪と枷により自由を奪われ、無抵抗なその身体を苛烈な責め苦に晒し続けた。人間どころかペットとしての扱いですらなかった。身体には常に痛々しい傷が刻まれていた。姉がいくら泣いても喚いても懇願しても、男の子は意に介さなかった。むしろ子供の無邪気さをもって、そんな姉の反応を面白がっているようだった。 男の子が遊び終わると、今度は父親らしき人物が姉の身体を貪り始めた。やはりそこに情などと呼べるものはなく、姉は乱暴に性処理をさせられていた。驚くほど簡単に姉は処女を散らし、男が満足するまで何度も犯され、絶頂させられていた。 そんな様子が何日も、何日も映し出された。 大の大人でさえこれほどの拷問には耐えられないだろうに、姉はそれをわずか9歳の心身で受けてしまった。一生分を遥かに超えた苦痛を与えられた姉の心は半年で折れつくし、壊れてしまっていた。動画の最後に出てくる姉は、完全に人間としての尊厳を失い、未来を諦め、ペットとしての生を受け入れているように見えた。ただ、微かな涙が目に浮かんでいたのを見て、僕の心は声にならない叫びを上げた。 僕は20歳になった。両親はもういないけど、不自由なく暮らしている。ただ、あの動画を見つけた日から、心にぽっかりと穴が開いたままで、何をしても満たされない。 姉は25歳になっているはずだ。 会いたい。 会って話をしたい。 まるで何事もなかったかのように。 他愛もない、どこにでもあるような姉弟の時間を過ごしたい。 9歳で止まったままの姉の記憶を、もっと塗り替えていきたい。 でも、それはもう叶わない。 今でも時々『飼育記録』を観る。埋めようとしても埋まらない姉の存在を求めて。そして……。 『おねえちゃんがいなくても、ちゃんと勉強して立派な大人になってね』 その声とともに、僕は射精した。微かな記憶にある姉への親愛の情が、どうしようもない劣情と入り混じって、怒りが、情けなさが、無力感が……。 ごめん、おねえちゃん。僕、立派な大人になれなかったよ。