青の誘惑

高級住宅街の静寂な通りを歩く男は、一抹の不安と期待が入り混じる心持ちで古風な邸宅に辿り着いた。これまでの訪問先ではほとんど相手にされなかったが、この最後の家には一縷の望みを託していた。古びた扉をノックすると、しばらくして現れたのは、40代後半とは思えぬ美貌を湛えた女性だった。 彼女は歳月に逆らうかのように、その顔立ちは端正で、体つきは見る者の心を惑わせるほどのグラマラスさを誇っていた。どうやら仕事から戻ったばかりらしく、着替えを急いだようで、身に纏う青いスーツがその美しさを一層引き立てていた。 「こんにちは、絵画の販売に参りました。」男は心を落ち着けるように微笑み、話しかけた。 彼女は興味を示し、セールストークを進める中で、1年前に夫が病で亡くなったことを静かに語り始めた。夫は生前、絵画を愛し、その影響で彼女も少し絵画に関心を持つようになったという。彼女の魅惑的な姿に心を奪われそうになる中、男は絵画への情熱を込めて話を続けた。 「もう少し詳しくお話を伺いたいわ。どうぞ、お入りください。」 彼女の誘いに応じて邸宅に足を踏み入れると、そこには世界各国から集められた絵画が美しく飾られていた。リビングに案内され、男が再びセールストークを始めようとしたが、彼女が穏やかに話を遮った。 「お願いがあるのです。私をモデルにした絵を描いていただけませんか？」 彼女は、夫が亡くなる前に「彼女をモデルにした絵を飾りたい」と語っていたことを打ち明けた。彼女は男に絵の上手な画家を紹介して欲しいと頼んだ。 男の心は驚きと興奮で満たされた。彼はかつて画家を目指していたが、絵が売れずに営業の仕事に転じた過去があった。この美しい未亡人の絵を描けるかもしれないという考えが彼の中で大きく膨らんだ。しかし、長い間筆を取っていなかった不安も同時に押し寄せた。 沈黙する男を見て、彼女は心配そうに尋ねた。「どうかしたのですか？」 彼女が足を組み替えると、スーツの裾からちらりと見えた魅惑的な下着が、彼の視線を捉えた。男は息を呑み、心臓が激しく鼓動するのを感じた。 「実は…私自身が絵を描きたいのです。」男は震える声で告白した。 彼女は穏やかな微笑を浮かべ、彼の瞳をじっと見つめた。「それなら、ぜひお願いするわ。」 彼の心に再び創作の炎が灯った。彼女の美しさと魅力が、彼の中に眠っていた画家の情熱を呼び覚ました。その瞬間、彼はこの出会いが新たな運命の始まりであることを確信した。