その天ぷらの問題点
「うむ。上出来じゃ。 これぞ、究極の天丼と呼ぶに相応しい」 やりましたね、親父さん。 自らが焼き上げた染め付けの器。 半世紀かけて育てた天丼のたれ。 そして、人間国宝の親父さんが揚げる 超絶技巧の天ぷら! まるで大輪の花のようだ、なんて美しい。 「十五でこの道に入って、 色恋にも目を向けずに60年。 この一杯を完成させるため。 試行錯誤を何万回も繰り返して来たのだ。 ワシは、この一杯を 『究極天丼、まんぐり返し』と名づけようと思う」 あ。 えーと、親父さん? そのネーミングは不味いと思います。