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②~夢見庵~ 心身を癒す温泉宿に連れ去られる女子の話
【 ~ 某年 4月初旬 ~ 】 春風といえどもまだ少し肌寒い中をものともせず、晴れやかな笑顔で駆けてゆく少女が見える。 「間に合った~!新入生用の教科書販売ってここですよね?」 高校よりも遥かに広い大学のキャンパスに圧倒されたのか、しばらく道を迷っていた少女はなんとか目的地に辿りついたことに安堵の表情を浮かべている。 …いや、彼女はもう大学生なのだ。 可憐な見た目のせいで少女と言いたくなるが、あと10日もすれば成人なのだから〝娘さん〟とか〝お嬢さん〟と言うべきかも知れない。 (③話へ続く) #夢見庵