幸せの過程
おかえりなさいの茜さん⑦ 「うわーん」 眠っていた娘が目を覚ましたらしい。 寝室からふよふよと飛んできた彼女が、 茜さんの胸に抱きついた。 この際、ふよふよにも目を瞑ろう。 「あらあら、ごめんね。 目が覚めちゃったね」 焦げた鍋を片付けながら、 優しくあやしている茜さんを僕は見る。 この気持ちは、なんだろう。 人とはちょっと違う日常だけど、 それは幸せに満ちていて。 たくさん苦労するから幸せになるんだと、 がむしゃらに働いていた昔を思い出した。 幸せになる過程は、 ずっと幸せでいい。 冷蔵庫を開けたら、 なんか緑色の毛むくじゃらが モケモケ鳴いていて。 僕は黙って、冷蔵庫を閉じた。