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あるロボット工場の1日
『登録番号0193、起動しました』 午7時。ロボット作業員たちは一斉に起動する。 作業員たちは工場内の格納庫を出ると、登録された行動プログラムに従い、それぞれの作業場所へと移動する。もちろん、作業員たちはプログラムを拒否することは出来ないーーというより、「拒否する」という意思を持ち合わせていないのだが。 それぞれの作業場所についた作業員たちは、「作業開始」の命令信号を受信後、作業を開始する。 作業中、作業員たちが私語を発することはない。作業員たちの頭の中にあるのは、各々が受信した命令事項を遂行することだけ。人間のような容貌をもつ作業員たちもまた、この工場の「設備」の1つなのだ。 作業員たちに、休憩や休息は与えられない。その必要がないからだ。また、労働時間は、各々の機体の充電残量が10%以下となるまで。作業終了後は、自動的に格納庫へと移動し、次の日の作業に備えて充電する。プライベートは一切存在しない。 作業員たちは働き続ける。 各々の機体が「稼働不能」と判断され、廃棄処分となるまで。